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連載クローズアップ

「もう50歳を過ぎたんだ」「肉体的にボンドはもう無理だと感じてね…」ダニエル・クレイグが語る“最高で最後の007”

ダニエル・クレイグ(俳優)――クローズアップ

2021/10/01

 女王陛下のスパイ、ジェームズ・ボンドとして英国のアイコンとなったダニエル・クレイグ。最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が10月1日に全国公開される。

「映画の出来も最高で、とても良い終わり方をできた。ボンドにとっても感動的でエキサイティングな旅になったんじゃないかな」

 かつて6代目ボンドへの就任が発表された際には、“プーチン大統領みたいだ”などと言われ、007ファンからの評判は散々だった。だが、2006年に『カジノ・ロワイヤル』が公開されるや、重厚な演技とセクシーさが人気を博し、007の記録を次々と更新。12年公開の『スカイフォール』でシリーズ最高の興行収入を記録した。

「前作『スペクター』(15年)を撮り終えた時点で、降りるつもりだったんだ。あの映画の撮影で足を折ってしまい、肉体的にボンドはもう無理だと感じてね。でも、家族とのんびりした時間を過ごしているうちに、ちょっと気が変わってきた。ボンドの物語をまだ語り尽くしていないな、と思えてきたんだ」

© Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

 クレイグはボンドと違い、早口でよく笑う。若々しい印象を受けるが「もう50を過ぎたんだ」とニヤリ。

「30代の頃より、倍の努力をしないと、体力も体型もボンドらしさを保てなくなってしまった。今回も撮影中に足首の怪我で、2週間現場を離れた。走れるようになるには6週間と言われたけれど、腕利きの外科医のおかげで早めに復帰できたんだ」

 それほどハードな新作を手掛けた監督は、日系アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガ。刑事ドラマ『トゥルー・ディテクティブ』が高く評価され、大抜擢となった。大作を撮るのは初めて。

「007のような超大作を成功させるには、最高の人材が必要だ。そして何か光るものがないとね。キャリーにはそれがある。確固たるビジョンを持ち、7カ月の撮影を乗り切るスタミナも充分だ。もう1つ重要なのは、優秀な脚本家でもあること。007はある意味ファンタジーの世界で、セリフもアクションも現実離れしている。その分、物語に説得力がないといけない」

 脚本にはドラマ『フリーバッグ』『キリング・イヴ』で注目を集める女優兼脚本家のフィービー・ウォーラー=ブリッジも参加。これは物語にこだわるクレイグの推薦だ。

 前作『スペクター』でマドレーヌ・スワン博士(レア・セドゥ)と結ばれたボンド。スパイを引退し幸せを満喫していたが、科学者誘拐事件をきっかけに任務に復帰することになる。ジャマイカ、イタリア、ノルウェーと、陸、海、空で冒険が繰り広げられるなか、注目は、悪役・サフィンを演じたラミ・マレック。

「最高だよ。ラミはこの映画に全力を注いでくれたんだ。彼はオスカーを獲ったばかりで、誰もが彼を欲しがったけれど、この映画を選んでくれた。幸運だったね」

 プライベートでは11年にオスカー女優のレイチェル・ワイズと結婚し、3年前に女児も誕生したクレイグ。ボンドに就任して15年と歴代最長となるが、今後役が抜けるのに時間がかかるのでは?

「僕はボンドを家に連れ帰ったりしないよ。でも、妻の意見は違うかもしれないね。日曜日は働かないと決めているんだが、それでもつい仕事の電話をしてしまう。すると、妻が隣で咳払いをして『もっと人間らしくして』と言うんだ。僕は普段、あまり社交的じゃないから、日曜くらい遊んでよ、ってことなんだ」

 公私とも絶好調なクレイグは、最高の007で長い任務に幕をおろす。

「撮影の前から、これが最後だと決めていた。寂しくはあるけど、惜しくはない。今が辞めどきだと感じたんだ。ボンドを演じた5本の全てに満足しているし、幸せだよ」

Daniel Craig/1968年、英チェスター生まれ。ギルドホール音楽演劇学校卒業後、舞台、映画で活躍。『007/カジノ・ロワイヤル』(06年)からボンドを演じる。『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19年)でゴールデン・グローブ賞候補に。

INFORMATION

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
10月1日公開
https://www.007.com/no-time-to-die-jp/

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