伊勢丹新宿店では今年の夏、フェムテック関連アイテムを集めたポップアップショップが展開されました。売り場の監修は、植物療法士の森田敦子氏。女性の健康に腟ケアが必須であると、メディアを通じて積極的に発信している人物です。

 売り場に並ぶのは当然、森田氏プロデュースの腟ケア専用コスメ。腟は老化によって、萎縮や乾燥が起こります。なので適度なマッサージや保湿を施し、快適に過ごしましょうというわけです。ケアが必須かどうかはさておき、スキンケア感覚で性器に触れることで体と向き合い、語られにくかった性の問題を口にしやすくなるきっかけになる場合もあるかもしれません。

 しかしさらに詳しく知ろうと膣ケアについて語られている書籍や記事を見てみると、森田氏をはじめ一部の医師たちもがいささか首をひねってしまうような、根拠の怪しいお説を語っているのですからびっくりです。

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腟ケア不足は孤独死とも関わる?

 女性の不調の多くは腟の冷えから来ていて、老化が加速する原因にもなる。腟まわりのケアは、女性ホルモンの分泌とダイレクトに関係する。更年期の不調は、腟と向き合ってこなかったツケ。腟ケア不足は孤独死とも関わる。逆に腟が満たされていれば脳も満たされ、免疫力があがり、ホルモンバランスも整う……。

 いやいや、腟、そこまで万能じゃないわ。「風が吹けば桶屋が儲かる」レベルに、遠すぎる因果関係では?

 ついでに「欧米では皆がやってるケアなのに、日本の女性は遅れている!」と煽るのも、ちょっとオワコン風。女性の健康問題は、体のメカニズムを「正しく知る」ことが解決への第一歩です。それなのに、医学的にどうも無理がありそうな主張で女性たちのコンプレックスを刺激したり不安を煽ったりする売り方は、フェムテックという市場では本来場違いであるように思えます。 

布ナプキン ※写真はイメージです ©iStock.com

 腟ケアだけではありません。雑誌では「話題のフェムケアアイテム」として、某有名メーカーの布ナプキンが紹介されていました。布ナプキンそのものは、選択肢のひとつであり、なんの問題もありません。ところがその布ナプキンメーカーの公式サイトには「布ナプキンを使ったらPMS(月経前症候群)が軽くなった」「生理痛がなくなった」などの体験談が掲載されているのです。怪しい健康食品と、同レベルです。

 私が過去に参加した同社のワークショップでは、「燃やすとダイオキシンが発生するような使い捨てのナプキンを、子宮と直結する場所に当てているなんて不調が起こってもおかしくない」とまで力説されていました。要は、使い捨てタイプの一般的な紙ナプキンは高分子ポリマーなどの石油化学製品でできているので、それが体に悪影響を及ぼすというネガキャンです。その主張を鵜呑みにすれば不安を煽られるだけでなく、ノシーボ効果(プラセボの逆)で体調が悪くなる人もいそうなんですが。