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田原俊彦は「これしかしない」と決めた男

 俳優の道を完全に閉ざしているわけではないが、今年の林真理子との対談では〈俳優もしてらしたけど、ずっと主役だったから、渋い脇役なんてイヤでしょう?〉と聞かれ、〈「主役じゃないとやんない」とか言っちゃって、「いい加減にしろ、おまえは」って言われるけど、それでも主役じゃないとやりづらい〉(2021年7月2日号『週刊朝日』)と答えている。現段階で主演以外をやる気はないようだ。

 しかし、テレビが40代以下の視聴率をコア指標にしている今、もう20年も俳優業をしておらず、主なファン層が50歳前後である60歳の田原俊彦の“主演ドラマ”が作られるとは思えない。Netflixなどが敢えて田原をメインにする理由も見出せないだろう。業界の現状を把握すれば、再び俳優として輝く姿を見られる確率は相当低い。

田原俊彦 ©文藝春秋

 そういう意味で、25年前の「これしかしない」という決断は25年後の今、「これしかできない」という状況に変わったとも言える。もし脇役でも構わないと役者の道を歩み続けていれば、新たな魅力が創出されていたかもしれない。しかし、田原はそれを自ら断った。気持ちをステージだけに向けた。

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「これしかしない」と決めた男は舞台から落下しようが、何度でも同じ場所に立ち向かっていく。それが、田原俊彦の“芸能界を生き抜く覚悟”なのである。