一時期の“アイドル冬の時代”を乗り越え、アイドルブームと言われて久しいが、現場の感覚では「ブーム」と呼ばれるほどの状態はとっくに去っているという。
大手事務所が仕掛けるアイドルグループがドームクラスの会場でライブを開催したり、グループ内の人気投票が「国民的イベント」と呼ばれていたのが約10年前。メジャーから地下、ご当地アイドルなど様々なグループが次々と生まれ、アイドルフェスが各地で開催されていたころがピークだったようだ。(取材・執筆=素鞠 清志郎/清談社)
チェキタイムで暴走するファン
この平成アイドルブームはジャンルの裾野を広げたが、別の見方をすればアイドルがひたすら細分化していった時期でもある。ここ数年は、メジャーデビューを狙わず、小規模なライブやイベントで細々と活動するインディーズアイドルが増加。しかしファン層は固定化しているので、現場はすっかり買い手市場になってしまった。
ライブのチケット代は会場費でほぼ相殺されてしまうので、アイドルたちは物販でギャラを稼ぐしかない。アイドルはいつもと同じ顔ぶれのファンに、何度もグッズを買ってもらわないといけないという状況なのだ。
そんな物販現場でアイドルたちの大事な収入源となっているのが「チェキ」である。ファンはお目当てのアイドルとツーショット写真を撮れるので、もはやステージよりもこちらがメイン。運営側としても原価が安く、同じファンに何度でも買ってもらえるため効率がいいのだ。しかし、このチェキタイムは、アイドルとファンが一番接触するポイントでもあり、暴走するファンが出てくる危険性も高い。
意味不明なポーズを指示してくる
あるアイドルグループを運営するスタッフの坂本航平さん(仮名)に話を伺った。
「チェキを撮るときに必要以上にアイドルに話しかけるファンは多いです。でも、そういうヤラカシを排除するのは簡単なんですよ。単純にルール違反なので、なにかあれば僕らが『ハイ終了です』と剥がしたり、出禁にすればいいだけですから。厄介なのは、ルール違反とも言い切れない謎の要求をしてくるファンですね」(坂本さん)
チェキ撮影時の「謎の要求」で代表的なのは、意味不明なポーズを指示してくるファンだ。