キッズアイドルではなく、アイドルの“ママ”を狙うファン
「いわゆる“ママがっつき”がいるんですよ。キッズアイドルに同伴している保護者のママに話しかけて、家族しか知らない情報や写真などを入手しようとするんです。なかには、最初からママ狙いのファンもいて、実際に口説いてデキちゃったこともありました」(石田さん)
運営もさすがに保護者までには目が届かなかったようだ。しかし、ほとんどのファンは、アイドルから一歩引いた立場であることをわきまえ、ひたすら推しのために情熱を降り注いでいる。ただ、それが行き過ぎると、恐怖の事態が起こってしまう。
前出の坂本さんは語る。
「アイドルにとって、誕生月に行われる『生誕祭ライブ』は、収益的にも大事なイベントなんです。ファンも推しのアイドルのバースデーを祝おうといつも以上に力を入れてくる。あるファンは、生誕祭イベントでアイドルの顔写真を大きくプリントしたお面を作ったんです。それを大量に作って、当日会場に来たお客さん全員に配った。
それでライブが始まると、ファンがみんなお面を被って出迎える、というサプライズ演出をしたんですが、当のアイドルは会場を埋め尽くしたファンがみんな自分の顔をしているという異様な光景に声をあげるほど恐怖したそうです」(坂本さん)
あくまでもアイドル本人に喜んでもらいたいだけなのだが、その熱意が行き過ぎてしまうこともあるのだ。
アイドルと不遜なファンという、いびつな関係性が常態化
「あと怖かったのは、あるアイドルが生誕祭でファンからもらった色紙。いわゆる寄せ書きなんですけど、よく見ると、そのアイドルの親族や学生時代の友達からの直筆メッセージが書き込んであるんですよ。どうやらファンがそのアイドルの地元を訪ねて、友人知人からメッセージを集めたみたいで。アイドルが喜んでくれればと思って作ったみたいですけど、怖いですよね」(坂本さん)
アイドルが体調不良で休業したり、とつぜん引退するというニュースがたまに流れるが、このような、あまり表には出てこないファンの行動で心身が疲弊してしまったというケースもあるのかもしれない。
かつてアイドルはメディアの中だけに存在し、遠くから崇拝するように応援するものだったが、いまやいつでも会えて気軽に話せる存在になってしまった。物販のために頭を下げるアイドルと不遜なファンという、いびつな関係性が常態化してしまった以上、危険な事例はこれからますます増えてしまうだろう。