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メリー喜多川から赤坂の路上で「郷ひろみのプロデュースから手を引いてよ!」と… 昭和の名プロデューサーが明かしたジャニーズとの“暗闘”秘話

昭和の名プロデューサー・酒井政利の実像 #3

2021/10/09
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『お嫁サンバ』『林檎殺人事件』…娯楽要素を捨てなかったからこその成功

「郷ひろみの最大の才能は、他人に自分を託すことができる力ではないでしょうか」

 酒井さんはそう語る。

「かつて『お嫁サンバ』(1981年)という歌を郷のために作ったとき、彼は『意味が分からない』『絶対に無理です』と言ってきたんです。でも、容姿が完璧な彼が音楽性、芸術性を追求し娯楽の要素を捨てたら、大衆はついてくることができないですよ。そのことを懇切丁寧に説明したら、彼は最終的に一切文句を言わず、歌ってくれました」

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独特な振り付けの『GOLDFINGER '99』

 樹木希林(2018年に死去)とのコミカルなデュエット『林檎殺人事件』(1978年)も大ヒットしたが、もともとアーティスト志向の強かった郷ひろみが「大衆的なスター」として成功した理由は、ある種の「勇気」を持っていたからだと酒井さんは言う。

 テレビドラマ『ムー一族』(TBS系)の撮影の際、台本どおり演技をこなした郷ひろみを樹木が一喝したことがあった。

「あんた、勉強してないね! 台本通りに演じるのはあたり前でしょ。最低3パターンくらいの演技を考えてくるのがプロでしょうよ」

 その言葉を聞いた郷ひろみは、気を悪くするどころか感銘を受け、樹木希林を尊敬するようになるのである。

「郷はそのあと『付き合ってくれるんでしょ? いつよ? 今晩どうなのよ?』なんて希林さんに交際を迫られて目を白黒させてましたよ(笑)。でも、彼は何かに挑む勇気だけではなく、他者の言葉を聞き、受け入れる勇気を持っていましたね。大切な自分を他者に託せられるという意味では、山口百恵さんと同じでした。スターの重要な資質ですね」

郷ひろみとの相性は抜群だった樹木希林

 秘話に満ちた黄金の昭和芸能界。さまざまな伝説を残したメリー喜多川氏も、酒井さんの後を追うように今年8月、死去した(享年93)。天上の2人はいま、何を語り合っているのだろうか。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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