文春オンライン

2021/10/20

 僕ら役者って「よーい、スタート」で始まって「カット」と言われるまでの間に芝居をするんですね。たしか、僕がいちばん最初にやった「人がいる」シリーズは「後部座席に人がいる」というテーマで、ターゲットのひとりがマテンロウのアントニーさんでした。盛大に驚いてくれて大成功だったんですけど、スタッフは誰一人として「カット」と言わない。すでにバラシ(後片付け)が始まりそうな雰囲気だけど、こちらとしてはカットがかからないから動くわけにはいかない。だから、動かずにジーッとしていたけど、誰もそんな僕に気付いていないという。

 ようやく、僕が芝居を続けていることにアントニーさんが気付いて「おい、まだやってるよ。怖いから、もうやめてくれ!」と騒いでくれて。そこでカメラを向けられたんですけど、やっぱり「カット」とは言われないのでジーッとしていて。その映像がスタジオで流れた時にダウンタウンさんが面白がってくれて、そこから「この人怖い」と話題になっていった感じですね。

――現在は「カット」はかかっているのですか。

白畑 相変わらずかからないです。ターゲットが驚いて、ネタばらしをして、照明が消えてもカットはかかりません。だから、いまもジーッとしています。それにターゲットの方が「まだ、やってる」とさらに怖がってカメラを向けられることもありますから。ディレクターさんやADさんがはっきりと「もう終わりですよ」と言うまでは動けないですね。

©️文藝春秋

ディレクターは「いつもの通りお願いします」

――偶然の産物というか、役者とバラエティそれぞれの習慣や常識の齟齬みたいなものが、 “いる人”のキャラクターを確立させることになったんですね。

白畑 バラエティはカットをかけずに、「もういいですよ」と言われたら終わるんですよ。だから、僕がずっと演技を続けているのが面白かったみたいです。単純に役者としての習慣でやっていただけですが。

――もう、なにがあっても無表情で無動作を貫くのがお決まりになっていますよね。

白畑 「人がいる」シリーズをやらせていただけるようになって、もう5年くらい経つので、現場を仕切るディレクターさんも何人か替わりました。新任の方がやってくるたびに「いつも拝見しています」「いつもの通りお願いします」みたいな感じで挨拶してくださいますね。