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――「あくまでそこに“いる人”になりきる」ということですが、なにかしら“いる人”の設定や背景みたいなものを想定して臨んでいたりはするのですか?

白畑 そこまではしてないです(笑)。ただ、このあいだネット配信の番組に出させていただいたんですよ。そのディレクターさんが「人がいる」シリーズのファンということで呼んでいただいたんですけど。その方も似たようなことを仰っていて、“いる人”のバックボーンや日常をフェイクドラマみたいな感じで描いたら面白いんじゃないかって。

©️文藝春秋

――ターゲットが驚くまで待っているわけですから、長丁場の現場だと思います。実際、部屋や自動車でのセッティングからターゲットが驚いて撤収するまで、どれくらいの時間が掛かっているのでしょうか。

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白畑 こればっかりは、ケースバイケースですね。やっぱり長いのは、ターゲットのお宅にお邪魔して帰ってくるまで待つ場合です。帰宅するまではリラックスして待っていられるけど、帰ってきてすぐさまクローゼットを開けたり、ベッドに入ったりするわけじゃないですから。まぁ、早いと1時間くらいで終わってしまうこともあります。

――終わるまでは飲まず食わずでしょうし、トイレに行きたくなることもあるのではと心配になるのですが。

白畑 収録前にちゃんと食べておくので、そのへんは大丈夫です。それよりも暑さですね。冬場でも布団を被ったり、ベッドに潜り込んだりしていると、暑いうえに息もできないんです。だからベッドに隠れる場合は、僕が入る穴をくり抜いたベッドを作ってもらいました。横に空気穴も開けてもらって。

ホッとしても、絶対に表情も体勢も崩さない

――“いる人”をやるうえで、気配の有無も重要なのではないかと。やはり、気を使っていますか。

白畑 気配を感じとられて見つかったら終わりですし、そうなったら面白くないじゃないですか。なので、細心の注意を払っています。たとえば、衣擦れの音とか立てないようにとか。ターゲットがなにかしら身体を動かす時には僕も一緒に動いて体勢を変えるんです。そうすると、なにか音が生じてもターゲットは自分で立てたものだと思ってしまう。この音のシンクロは場数を踏んでいくうちに、絶妙なタイミングを掴めるようになりました。

――ターゲットが白畑さんと出くわして驚く姿を見て、「してやった」的な気持ちはこみ上げるものでしょうか。待機している時間もあるわけですし。

白畑 いやいや、もう「やっと気づいてくれたな」「やっと見つけてくれた」というほうが大きいので(笑)。でも、それでちょっとでも僕が気を許した様子を見せたら、企画が面白くなくなってしまいます。見つけてもらってホッとしても、絶対に表情も体勢も崩さないようにしていますね。