文春オンライン

「下請けの映像プロダクションで、連日残業が続いても手取り20万いかなかった」 『来世ではちゃんとします』の作者が“深夜のマンガ喫茶”で抱いた“反骨心”

いつまちゃんインタビュー#1

2021/10/23
note


──「セフレちゃん」というのは?

いつまちゃん 私が描いていたオリジナルキャラクターです。もともと私は自分の失恋をネタにTwitterでエッセイマンガを描いていたんですけど、初めてのオリジナル連作「セフレちゃん」でバズってフォロワー数が一気に伸びたんです。なので編集部もそのテイストを期待してましたし、健気に恋をしていたはずなのに、なぜか都合のいいセフレになってしまう「セフレちゃん」みたいな桃江ちゃんがスタジオデルタで働くストーリーにすれば私の良さが活きると思ったんです。

モデルは生きてきた中で味わった様々な感情

 でも描き始めたら、「働いても働いても薄給で、好きな人にはふり向いてもらえない」という、すごく暗い話になってしまって…。それで今度は、桃江ちゃんのほかにも、桃江ちゃんと同じくらい個性豊かなメンバーを集めて群像劇にしたらいいんじゃないかと思って、会社帰りにマンガ喫茶に泊まって徹夜でプロットを描きました。その時急に何かが降りてきて(笑)。気がついたらバランスよく5人のキャラができあがっていました。

ADVERTISEMENT

──5人がそれぞれ性をこじらせているという設定にされたのはなぜですか?

いつまちゃん 5人のモデルは今まで生きてきた中で味わった様々な感情ですね。

 例えば林くんの偏った思想は、第二次性徴期に貪るように読み、共に育った掲示板「2ちゃんねる」の様々な住人たちから着想を得てます。「女は付き合う前に一度安いチェーン店に連れていって(金銭目的じゃないか)反応を見ろ」みたいな書き込みが一時期議論の的になってましたが、ネット上のイメージだけで膨らんだ自分の経験不足による偏見って結構生きてて損するんですよね。これから仲良くなりたい人に対して試し行動して嫌われたり。みんな本当は純粋で傷つきたくないだけの良い奴なのにな…という歯痒い気持ちから生まれたのが林くんです。

「いつか何者かになりたい」という反骨心

 魔性のタラシの松田くんは「相手が欲しがってる言葉がわかる」特性によって誰かにつけ込んだり相手の執着でがんじがらめになったりした時の虚しさから、梅ちゃんはたまに感じてしまう性欲への疑問や「いつか何者かになりたい」と思ってマンガを描き始めた反骨心から、好きな人にとことん尽くしても、やることがすべて空回りしまった悲しさは檜山くんに反映されています。5人のセフレがいる桃江ちゃんは、承認欲求と性的好奇心と母性を極端に表現したイメージです。

関連記事