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発覚が遅れればさらなる犠牲者が出た可能性も…

 弁護側が、「西川さんを気遣う気持ちがありながら殺害した理由」について尋ねると久保木容疑者は「説明できません」と話した。

 久保木被告はさらに八巻信雄さん(当時88)の点滴へヂアミトールを混入した事件について語った。それは“無差別殺人”とも呼べる行為だった。

©文藝春秋

 起訴状などによると、西川さんの点滴袋にヂアミトールを混入した9月18日、久保木被告は八巻さんの分を含む5つの点滴袋と生理食塩水にヂアミトールを混入した。

「記憶では10個(の点滴袋)に入れた。生理食塩水に入れたことは記憶にない」などと法廷で話した久保木被告は「八巻さんになぜ投与したのか」と尋ねられると「分かりません」と言った。

 続いて「八巻さんの点滴という認識はなかったのか」という質問に「はい」と答えた。「遺族に説明したくないので自分が勤務していないときや別の担当がいるときに死ぬように消毒液を混入した」という従来の主張とは異なる「無差別殺人行為」に至った経緯については、弁護人にその動機を尋ねられても「わかりません」という一言を述べるのみだった。

 八巻さんの点滴袋が泡立っていたためその後、事件が発覚したが、発覚が遅れればさらなる無差別殺人の犠牲者が出ていた可能性がある。

「すみません、ご遺族の顔を見て謝らせていただいてもよろしいでしょうか」

 この日の公判の最終盤、久保木被告は唐突にこう述べる場面があった。

旧大口病院 ©文藝春秋

 法廷内はざわついた。遺族らと相談した上で検察側は「お任せします」と述べた。その後、裁判長は「言葉としておっしゃりたいことはマイクに向かっていったほうが伝わると思います。それから遺族の方を向いて話してください」と話した。

「裁判ではお詫びの気持ちをお伝えしたいと思っていた」

 久保木被告は「私の身勝手な理由で大切なご家族の命を奪ってしまい、大変申し訳ありませんでした」と話し、「許していただけないとは思いますが、裁判ではお詫びの気持ちをお伝えしたいと思っていました。本当に申し訳ありませんでした」と少し大きな声で遺族の方を向いて話した上で深く頭を下げた。

 遺族の一人の女性は、被告のこの謝罪の後、何度も涙を拭う様子を見せた。

 小学校低学年の頃には仲の良い友達と「セーラームーンごっこ」に興じていたという久保木被告。徐々に友達はいなくなり、大口病院では相談ができる同僚などはいなかったようだ。11日は弁護側による被告人質問だったため、「ゆるい質問ばかり」(司法担当記者)だったが、12日は、検察側が「大量殺人犯」を厳しく追及するとみられる。

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