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「安くする提案っていうのはいくらでもできますが、お客様の納得感との折り合いが大切です。たとえばこのお車で、『高くなってもいいからとにかくキレイに』ということであれば、塗装の範囲を広げて、ドアや窓枠なんかも一旦すべて外して、マスキングも全面的にやるわけです。もちろん工数が増えるわけなので、『そこまでしなくていいよ』という方のために、それぞれ納得のいく形で費用と工数を提案することが大切です。もちろん、現場としては安い料金でどれだけできるか、というのが常に求められるわけですが」(同前)

今回、ドア下部の樹脂モールは外さずに作業することも可能だと言われたが、外した方がキワの部分をうまく仕上げられるとのことで、モールの脱着をオプションとして選択した

 たとえばディーラーであれば、このような融通をきかせるのは難しいだろう。実際に客側が「とりあえず目立たなければいい」程度に考えていても、工場と密に連携が取れず、「いくらでどれくらい」という目安が提示しにくい。結果として、メーカーの看板もあり、安全策としての「交換」が選択されることになる。

板金工場では消費者が「選ぶ主体」

 ディーラーと比べた板金工場の特徴について、代表は次のように言う。

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「板金工場の強みは、引き出しがいくつもあることです。交換はもちろん、修理の方法も複数提示できますので、費用対効果やそれぞれのメリット・デメリットを説明しながら、どういった選択肢がベストかを相談していける、というのがディーラーにはないポイントだと考えます」

完成後の画像。どこを直したのか、写真で見てもわからない。肉眼で凝視しても、静止状態では修理箇所を判別することはできそうにない。動いている状態で、じっと映り込みを観察していると、「少し周りと違うような気もする」といった具合だ

 板金工場のメリットは、比較検討にもとづく選択が消費者側に委ねられる点にある。反対に、このような比較検討を面倒に感じたり、そもそも修理費用がさほど負担でなかったりするのであれば、ディーラーに任せておくのがよいのだろう。

過去に持ち込まれた車両。ディーラーではクオーターパネルの交換が必要になり、それでは「修復歴」が記録され、事故車として扱われてしまうため、査定にも大きく影響することになる

 板金を依頼する側は、多くの場合「なるべく安く、なるべくキレイに」という思いを抱えている。納得のいく形で板金を依頼するには、この相反する要素に折り合いをつけ、「落とし所」をあらかじめ作っておく必要があるだろう。

ユーザーの希望をふまえ、交換ではなく板金修理での対応となった

「難しいのは、『実際にどう仕上がってくるのか』がお客様にはわからないところです。相談を通じて、お客様が求めているものが何なのかを正確に把握しつつ、どれだけイメージを共有できるかが大切になってきます。『こういう風に直してもらいたかった』を実現することが目標になりますね」(同前)

塗装後の状態(サイドステップは未装着)。ディーラーに比べ、費用も半額ほどで抑えられたという

 板金工場を選ぶ際には、こちらが「落とし所」を見つけるうえでの判断材料を的確に与えてくれるかどうか、というのが一つのポイントになりそうである。