最も難しい作業は…
作業のなかで、とくに難しいのは「色合わせ」の作業だという。メーカーが定めるカラー番号をもとに塗料を調合しても、実際の色味には合わないことがほとんどだ。経年状態やもともとの塗装状態によって、一台一台色合いは微妙に異なっている。
「昔だと、一旦カラー番号どおりに作ってみても、全然合わないことも珍しくなかったですね。色が合うまで作り直して……というのを繰り返すんですけど、最近ではカメラである程度近い色を出せるようになりました」(同前)
解析用のカメラで取得したデータをPCに取り込めば、もっとも近い色の調合が提示されるシステムである。
「細かい調整は人間ですけど、『一発目に作るものが全然違う』ということがなくなったので、手間はかなり少なくなりましたね」(同前)
規定の手順に従い、色合わせなどの地道な作業を繰り返していけば、一般の目には「元通り」という水準に達することができるわけだ。
受注金額と工数のシビアな関係
このように、仕上がりの品質は「どれだけ技術があるか」よりも、「どれだけ手をかけるか」が問題になる。現場責任者の話では、この際「受注金額と工数の兼ね合い」が重要になるという。
「保険会社には、修理の見積もりを出すための基準として、工数と料金のレバーレートっていうのがあります。1時間あたりの工賃目安が定められているんですが、私たちが作業する際もこれが目標になってきます。受注金額から、どのくらい時間をかけられるかが決まるわけですね」
少し窮屈な話に思えるが、受注窓口と作業現場が直結している板金工場では、費用と作業工数との関係をもとに柔軟な提案が可能となる。板金塗装においては誰もが「最高の仕上がり」を求めているわけではなく、筆者のように「ある程度目立たなければいいから安くしてほしい」という消費者も多い。求めるレベルに応じて工数を勘案し、費用を提示する体制があれば、客側の納得感も得られやすい。