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板金工場の修理品質はまちまち?

 次に気になるのは、仕上がりの品質である。これだけ料金の差があると、消費者としては「安かろう悪かろう」を想像してしまう。

「もちろん、品質の面ではディーラーが一番安心でしょう。メーカーの看板を掲げている以上、どこに出してもトラブルのない品質を提供しなければいけません。

 一方、板金工場はまちまちですね。ディーラーの下請けをしている工場もありますし、同等かそれ以上の技術を持った工場もあります。一方、安さを重視するあまり品質がおろそかになっているケースも見られるのが実情かと思います」(同前)

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 消費者の目線からすると、ディーラーであれば一定以上の水準が担保されるが、板金工場は「頼んでみないとわからない」ということになる。具体的に、品質を左右するポイントは何なのだろう。

「直したところをわからないようにする、という点だけで言えば、どの工場であっても技術は持っています。それができなければ、お客様に受け取ってもらえませんから。ただ、コストやリソースの面で、作業の際に徹底すべきポイントが省かれてしまうと、『安かろう悪かろう』ということになってしまうんだと思います」(同前)

下地と上塗りの付着度合いを確保するための「プライマー」を塗布した状態。こうした下地処理の段階で油脂やホコリが入ってしまうと、後々になって汚れが膨らみ、塗装が泡状になる「ブリスター」と呼ばれる状態に陥る

 つまり、「素人目に仕上がりが悪い」というのは、「腕のよしあし」以前の問題であるケースが多いということである。時間をかけて施工すれば、十分に仕上げられる技術があるにもかかわらず、工程管理が行き届かずにプロセスが省かれてしまう、といった具合である。

「腕」よりも「プロセス」

 仕上がりの悪さは「技術以前の問題」というのは意外だが、現場責任者から聞いた話からも、同様のことが言えそうである。

「器用さはあまり関係ないですね、理屈がわかっていればうまくいく作業です。ちゃんと理屈を教えてもらえば、やるべきことも入ってきやすいですし。道具も進歩していますから、それをうまく使うのも大事だと思います」

プライマーを吹く前の段階。鉄板を叩いてある程度形を整えたあと、パテで表面を整える。パテやプライマー、研磨用のサンドペーパーなどはカー用品店などでも販売しているため、DIYでも似たような作業は可能ではあるが、作業環境を整え、手順を正確に踏んでいくのは案外難しい

 板金塗装というと、「職人の腕」に依存しそうなものだが、必ずしもそうではないようだ。もちろん技術の差はあるが、基本を怠らずに作業することで、プロとしての品質は担保できるのである。