2020年1月に、14歳で「感覚過敏研究所」を立ち上げ、マスクを着けたくても着けられない感覚過敏の人のための商品を開発、販売して注目を集めた加藤路瑛さん。
加藤さんが「クリスタルロード」を起業したのは、中学1年生の12歳のときだった。
同社では小中高生のための職業探究ウェブメディア「TANQ-JOB」、18歳以下のためのクラウドファンディングサイトなどの事業を展開してきた。
中学1年生の加藤さんに起業を決心させたのは、「働きたい」という思いだった。
「子どもの頃に仕事を体験できるおままごとセットで遊んで、働いてみたいと感じたのが最初です。仕事をしてお金をもらったり、ありがとうと言われたりするのが楽しそうだなと思いました。考えてみると、祖父母が経営している民宿でお手伝いをして、お金をもらったのもいい記憶として残っています。『社長になりたい』というのはあまり考えていなくて、アルバイトしてみたい、ぐらいの気持ちでした」
両親は「それほど乗り気ではない雰囲気でした」
加藤さんはその「働きたい」という思いを、将来の夢のままにはしておかず、すぐに動き出した。後押しになったのは、「ケミストリークエスト」というカードゲームだった。
「原子を結合させて分子を作るケミストリー、つまり化学がテーマのゲームで、中学1年生のときに母が買ってくれました。このカードゲームを作ったのは小学生で、12歳で起業した人だったんです。それを知って『小学生で起業した人いるじゃん、僕も働きたい』と思ったのがスタートです。でも親に相談したら『いいんじゃないの。学校の先生に相談してね』とそれほど乗り気ではない雰囲気でした」
翌日、早速学校で担任の先生に話すと、事業計画書を作ってメールで送るように伝えられた。起業についての知識も事業プランもあったわけではないが、加藤さんはイチから考えて事業計画書を提出した。
「子どもだけど働きたい人が自分以外にもいるのではないかと思ったので、親子起業支援のような計画書を書きました。学校を休まない、赤点をとらないといった学校への約束もつけました。担任の先生が手伝ってくれて、校長先生に自分でアポを取って、事業計画をプレゼンしてOKが出れば、という段階までこぎつけました。最初の試練でした」
プレゼンした結果、校長先生は応援を約束してくれた。
起業について相談したときに「まだ早い」とうやむやにせず、実現に向けて学校内の調整に走り回ってくれた担任の先生に、加藤さんは感謝しているという。
「寛容な先生でしたし、起業した人たちが集まって経営を学ぶイベントにも参加している先生だったからかもしれません。先生の言葉がなかったらやれていないと思いますし、もちろん親にダメと言われても今のようにはなっていなかったでしょうね」