家庭と学校では応援されたが、12歳での起業に対して理解を示さない人も多かった。
「周りの知り合いや、そこからつながった会社員の人など大人に相談したら、『中学生で起業して成功なんてファンタジー』とボロクソに言われました。でも相談したうちの1人の30代の社長に『大人と反対のことをやれば成功するよ』と言われたのが勇気になりました。いろいろな人に話を聞く中で、大人であっても人の意見ってバラバラなんだなということも知りました」
2018年12月に、こうして「株式会社クリスタルロード」を創立。15歳に達していなかったため、母に代表取締役をお願いし、自身は取締役社長となった。そして始めたのが職業探究ウェブメディア「TANQ-JOB」、18歳以下のためのクラウドファンディングサイトだった。
事業を始めるにあたっての初期費用としては法人登記に30万円、またクラウドファンディングの支援をもとに資本金100万円で会社を立ち上げた。上場こそしていないが経営のシビアさは他の企業と全く変わらない。起業から3年間の手応えについて、加藤さんはこう答える。
「うまくいったとは言いがたいですね。たとえば、2018年10月にスタートさせた、小中高生で運営するウェブメディア『TANQ-JOB』。“働く”をテーマに、小中高生にとってリアルな情報を提供するメディアを目指しました。立候補した中高生は20名以上、その中で実際に主体的に動いていた5名くらいで編集体制を作っていました。インタビュー経験はコミュニケーションの勉強になりましたが、事業としては採算が取れず現在は活動を停止しています。僕自身の編集長としての能力が足りていなかったし、せっかく小中高生でやっているのに周囲のメディアと同じものを目指してしまい、差別化できませんでした」
「2期目は会社として黒字化しました」
小中高生ならではの感覚などをいかしたメディアを目指すのではなく、既存のメディアと大きな差のないつくりになったことに反省があった。
「ただあの経験が、感覚過敏研究所につながっています。また、クリスタルロードは、1期目は赤字でしたが、感覚過敏研究所を立ち上げた2期目は会社として黒字化しました。法人税もしっかり払いました」
12歳で起業してから3年、現在は通信高校に通う1年生であると同時に、社長業に力を入れている。信念は「今をあきらめない」。年齢やお金などを理由にやりたいことをあきらめたくない、そんな目標を掲げてきた。そして、社会の変化もわずかながら感じるという。
「僕が起業した時は『12歳で起業する人なんていない』と言われていたけれど、たった3年で、同年代の起業家は増え始めています。これからもどんどん出てくると思います」