勤務先が運営するゲストハウス内に理想のサウナを作りたい。その一念で、社長を説得して行ったフィンランドで最初に入ったのは、まさかのゲイ専用サウナだった……。
「でも翌日には、理想に近いアウトドアサウナのクーシヤルヴィやヘルシンキのカフェと一体化したおしゃれな施設、ロウリュとか、色々視察出来ました。中でも日本人のデザイナーとフィンランド人の旦那さんがやってるクルッートゥーリ・サウナという公衆サウナがあって。使わなくなった木くずを燃やした熱源で部屋全体を温めている、とてもエコなサウナだったんです。社長に『こういうサウナをやりたいです』と言ったら『やろう!』となって」
LIG流人材育成術
社長のOKは取り付けたものの、そこは野田に数々のムチャを課してきたLIGの吉原社長。当然一筋縄でいくはずがなかった。こういう所がこの会社の面白いところであり、それがどんどん野田のユニークな発想を引き出すきかっけにもなっている。
「社長に『どうにかしてまず金を集める方法を考えろ』と言われて、クラウドファンディングを教えてもらって。それでなんとか300万円くらいまでは集まったので、とにかくサウナの小屋だけは立てようと。2018年の10月ぐらいから計画し始めて、そのタイミングで僕も移住しました。
地元の大工さん2人と僕と3人で着工して。2人とも62歳の頼れるベテランのビルダーさん達だったんで、僕はもっぱら拙い絵をかいたり本を見せたりして。彼らに『屋根がこんなに低かったら頭ぶつけちゃうよ』と言われたら『いや、それでいいんです』と答えたり、『ベンチとか照明は絶対目線に入れたくないです』とか。ああだこうだ言い合いながら、お父さんと一緒に作っているかのような気分でサウナ建てて(笑)。ストーブに関しては地元のMOKI製作所というところを見つけてそこにお願いしました。公衆浴場法とか消防法とかは全部僕の方で勉強して。あと、ここは国立公園なので、環境省とのやりとりも大変でした。
でも元々ゲストハウスとしてLAMPがこの土地でやってきた実績と信頼があったので、助けられました。新参者で来ると、もっと難しかったと思います。そういうのを一歩一歩越えつつですね。徐々に設備を増やしていったんです。水風呂も1個の樽が2つになり、2つが4つになりという風に」
なんとしてでもサウナを作りたい。ずぶの素人が執念でサウナ開業までこぎつけたと思った矢先、事件は起きた。