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解決の糸口は「早い段階で第三者に介入してもらうこと」

――マンガでは医療につなげたことで社会復帰できたケースもあれば、命はつながったけれど社会復帰の難しいケースも紹介されています。解決の糸口はどこにあるのでしょうか。

押川 家族の「ヤバい」状況をきれいごとや親の都合で隠さず、早い段階で第三者に介入してもらうことです。これまでの人生を否定されることもあり、それがきつくて、目先の楽な方に逃げてしまう親もたくさん見てきましたが、子供が大きくなり問題が複雑になるほど、介入してくれる専門家は皆無になります。できるだけ早い段階で家族の恥部まで晒して相談する、その覚悟を持つことが、解決のための近道だと思います。 

 成人した子どものやることに親の責任はないとよく言われますが、私は親には子どもを産んだ責任があると思っています。子どもの意思や承諾なしに「命」を創り出すのです。泥臭くて融通が利かず、まして親の思うとおりになんてならないのが子育てですが、それでも私はあえて、「あんたらの作った子や。頑張れ!」と励ましたいです。

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問題を起こす子は、家族のトラブルを体現しているに過ぎない

――親の責任をお金で解決しようとする家族のケースも描かれています。

押川 刑事事件の弁護士でも国選と私選から選べるように、お金をかけて問題解決すること自体は必要です。ただし人間の問題だからこそ、お金を払ったからと言って全て親の思い通りになるわけではない。

 自分の子どもが社会生活も送れないくらい重い精神疾患を抱えているとか、ゆがんだ人格や性癖を持っているという現実に向き合うのは勇気がいることです。心地よい情報ばかりを並べて「治りますよ」という専門家のいうことを鵜呑みにし、ズルズルと事態を悪化させている親も多く見てきました。でも、その手の親は「お金を遣った」だけで、私から見れば、ただのギャンブルです。子どもの現実も見ずに無理な投資をして負けた。それを「子どものためにこんなに頑張ったのに!」とすり替えています。

 親は問題を起こす子どもをトラブルメーカーだと思っていますが、私に言わせれば、その子どもは家族のトラブルを体現しているに過ぎません。本当に子どものことを思うのなら、親自身も自分の生き様を一度、見つめなおしてみるべきです。

 

 たとえばアルコール依存症の3人に1人は依存症の親をもっているというデータがありますが、これも、親が自覚をして子どもに、「うちはこういう家系なんだよ」と正直に話しておくことで、依存症に対する予防ができます。

 わが子がちょっとヤバいなと気づいた時に、「私もたいしたことない」と親が言ってあげることで子どもが楽になるケースもあります。

 子どもに必要なのは学歴や肩書きよりも、個々の力でサバイブできる力を身につけることです。それを身につけさせるためには、親だけでなく、まわりの大人が率先して「しぶとく生きる姿」を見せていくことです。

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「子供を殺してください」という親たち 1 (BUNCH COMICS)

押川剛 ,鈴木マサカズ

新潮社

2017年8月9日 発売