今年も全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が発表されたわね。すべての小学六年生と中学三年生を対象に二〇〇七年から毎年行われている調査だけど、ランキングを付けて子どもたちを競わせるようなやり方は「百害あって一利なし!」とボクは以前から指摘してきたの。

 例えば今回の都道府県別の成績を見ると、上位と下位の県の平均正答率の差が縮まって地域差が縮小した。一見いいことに思えるけど、過去問題を徹底的にやらせるなど、下位の県が「得点を伸ばすテクニック」を身に付けただけではないかしら。

 おかげで、以前はずっと下位だった高知県が小六の国語Aで五位、沖縄県が算数Aで四位と、ありえないほどの大躍進! でも、このテストには、基礎的な知識を問うA問題と応用力をみるB問題があって、高知では小六の国語Bは二十五位と、同じ国語でもAとBで成績にかなり差がある。A問題は暗記で点数を上げやすいから、テスト対策の効果も大きい。子どもたちの学力が本当の意味で伸びたわけではないかもね。

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学力テストで問題を配布する教諭
Photo:Kyodo

 もともと学力が高かった秋田、石川、福井、富山の上位常連県でも、順位を気にするあまり、ついにテスト対策が始まっちゃった。「自分たちの代で上位から落ちるわけにはいかない」と子どもたちまでプレッシャーに苦しんでいるの。

 まるで学力テスト狂想曲。成績の悪い子が肩身の狭い思いをするなど歪みも出ている。先生方ももちろん必死で、平均点を上げるため勉強のできない子をテスト当日に休ませたり、先生がさりげなく答えを教えたり……。成績のいい子が風邪で休んだら、先生が車で迎えに行った、なんて話も聞いたわ。本当にバカげてる。本来の目的である授業の改革や教育行政の改善のためなら、三年に一度のサンプル調査で十分。十年の節目に、ぜひ見直してほしいわ。