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磯崎:
 そうですよね。だから昔から将棋ソフトというのは、安全面に対して危険方向に極限まで振り切って作ってるようなところがあって。これが勘定系のシステムだったらいまごろ大炎上していますよ(笑)。

──銀行で起きたしまったシステム障害のニュースを見ていると、よくわかります(笑)。どこまでチェックするかは、用途に合わせて変わってくるものなんですね。

磯崎:
 例えば、500円玉の代わりに韓国の500ウォン硬貨を加工した偽500円玉を自動販売機に使うという事件が1982年に多発しましたが、加工してなければまあ500ウォンが500円玉の代わりに使えることはないですよね。それくらいのチェックはしている。

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 でも将棋ソフトでは、そういうチェックをするコスト(計算時間)が惜しいんです。NPSが低下しますからね。すなわち、500ウォンなんか入ってけーへんやろ、と思ってプログラムを書いているところがある。500ウォン入ってきたとしたら、そんなん入れる奴が悪いわ、と思ってプログラムを書いている節がある。NPSを追い求めるために。

──そうして、世の中の求めるものを作り続けていった結果、バグが出やすいものが残ったと。

磯崎:
 でも、このデファクト戦争というのは、2、3年くらい前に終わっちゃったんです。

──大会の決勝に残るソフトがみんな、やねうら王のクローンになるような状況が出現したと。

磯崎:
 はい。本来は独自に探索部のコードを書いて、新しい地平を切り拓ける人こそが残っていくべきだと私は思うのですが、そういう人たちが大会で予選落ちするのでどんどん将棋ソフト開発から離れていきました。

 最近のDeep Learningのブームまで残っていてくれたなら、もっと多様な将棋ソフトがある世界線もあったかと思うのですが……。


 様々な偶然が重なったことで、顕在化したバグ。
 杉村はイベント後にバグの検証を行った。

「あのバグを修正したあと、短時間の対局ではありますが、dlshogiと水匠を対局させて勝率を検証しました。結果は、ほぼ修正前と後で勝率は変わらなかったんです」