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──それはツラい……。頑張ってオリジナリティを出した小説よりも、あまり何も考えずに売れてる作品をコピーしたラノベのほうが売れるみたいな現象が起こっていたと……。

磯崎:
 時系列順に言うと……『Apery』の平岡さんが(2015年の電王戦FINALの後に)『Aperyをオープンソースにします』と宣言し、ソースコードを公開されたあと、やねうら王を含めて、ほとんどのソフトが評価関数についてはAperyと同等のものを使用しました。

 将棋ソフトは、探索部と評価関数という二つが車輪の両輪で、評価関数が同じということは、車輪の一つが同じパーツということです(笑)。あとは探索の差でしかない。

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 しかし、その探索部は、Stockfishの探索部がすこぶる優秀だったので、結局、誰が一番早くStockfishの新しいバージョンを取り込んで自分のGitHubに公開するかという競争になりました。

 で、その競争が落ち着くと、その次は、いかに将棋に適した形に改良してNPS(探索速度)を上げるかの競争になったんです。評価関数はAperyのまま、探索部はStockfishのまま。そうなると探索速度で差をつけるしかありません。NPSが1番速ければ、たくさんの開発者がクローンを作ってくれて、改良していってくれるかと思って。

──オープンにする代わりに、みんなに使ってもらって強くしてもらうという戦略なわけですね。

磯崎:
 そうですね。やねうら王は、オープンソースの将棋ソフトの中で、デファクト・スタンダード(事実上の標準)になりたかったわけです。

 NPSが5%違うだけでレーティングは10~15くらい変わってくる。同じ評価関数を使ってもレーティングが上がるなら、みんなやねうら王を使うわけじゃないですか。

──確かに。ちょっとバグはあるけど強いソフトか、バグは無いけど弱いソフトかだったら、ほとんどの人は強いソフトを使いたがると思います。実際、プロ棋士もバグがあることを知りつつ、使い続けていたわけですから。