磯崎:
Stockfishの開発者の人たちは本物の天才集団で、Stockfishにはこの手のボードゲーム(将棋やチェス)全般でうまく動くような汎用性の高い探索部のコードが書いてあります。
──そんなに凄いソフトなんですか……。
磯崎:
そのためチェスAIのプログラムであるStockfishの探索部を将棋AIのプログラムにコピペしてくるだけでかなり強くなるんです。ここ近年でもStockfishの最新版にキャッチアップするだけで1年でR50~100ぐらい強くなっています。
――よく選手権のアピール文章に『Stockfishの最新版を~』って書いてありますけど、あれはつまり『強くなってるぞ!』とアピールしてるわけですね。
磯崎:
やねうら王では実際は、そこから将棋に向けてチューニングも行っているので何も考えずにコピペしているわけではありませんが(笑)。
最近では9月下旬に、やねうら王V6.50というのをリリースしました。これは半年前のやねうら王からR50ぐらい強くなっています。水匠4の探索部よりも強く、現状NNUE系では最強です。これも全部Stockfishのおかげです。
──Stockfishチートすぎる……。あの、Stockfishをベースにしていない将棋ソフトってあるんですか?
磯崎:
最近はDeep Learning系の将棋ソフト(dlshogi、PALなど)が出てきて、これらはStockfishの探索部は参考にしていませんが、Deep Learningを用いないソフト(NNUE系など)は、上位のソフトすべてStockfishの影響を何らか受けていますね。
2013年~2016年ごろには結構独自の探索部で大会に参加する開発者の方もおられたのですが、Stockfish系の探索部が優秀すぎて、独自に書いている開発者は軒並み予選落ちしてしまうんですよね。これではなかなかモチベーションが続かないというのもあるのでしょう。