「コンピュータ将棋の開発って、とってもお金がかかるんです。賞金が出るのであれば『その金額分くらいは強くしよう』と思えるでしょうから」
それに加えて今回のイベントが世の中に大きなインパクトを与えたのは、ディープラーニング系の将棋ソフトの強さだ。
もともと序盤の力には定評があったが、長時間でその力がさらに際立っているように見えた。
「最近、ネット上でもdlshogiについて話題にする人がすごく増えた印象です。今回のことでもっと増えると思います。だからディープラーニング系を普及するチャンスではあると思うんですけど……」
「山岡さんには、とっても負担だと思うんです。『dlshogi、動かない』みたいな反応も多いので。そういうところをどうやって普及していくのか……しかも無償じゃないですか。普及も大事ですけど、生活だって大事です。難しい部分だと思います」
「私は、dlshogiが無料で公開されたら、まず『ありがとうございます!』とお礼を言って、『dlshogiこんな感じです! 勝率はこんな感じです!』みたいなのを出して、フィードバックする。それが役目だと思っています」
では今後の将棋ソフト開発のために、賞金の他に何が必要なのか?
私の問いに、杉村はこう答えた。
「フィードバックが欲しいんです。『将棋AIは~』とかだけじゃなく、『水匠は』とか『dlshogiは』と、ちゃんと言ってほしい」
「開発者の中には『名前すら言わないのは何なの?』と思っている人もいます」
「使ってみた感想を言ってほしいんです。『水匠ぜんぜん読み筋ダメじゃん!』みたいなことでもいいので、名前を言ってほしい。それだけでもいいので……」
使用しているソフトについて言及するのは、プロにとっては自分の研究を知られてしまうリスクを負う可能性がある。そのことは杉村も理解している。
今後も棋士たちとの交流を続けていくのだろうか?
「もちろんです! ただ、ちょっと私が出しゃばりすぎですよね……本来、ディープラーニング系のことであれば山岡さんですし、ソフトを使った勉強法や棋譜などを解析するのは『PAL』の山口さんや『Qhapaq』の澤田さんが詳しいわけですから、そういった方々とお繋ぎするようにできたら……と。そういう気持ちは、とってもあります」