※評価値が350点離れた局面から水匠同士が対局した場合、計算上は8割以上の確率で350点リードした側が勝つと考えられるほどの差。
「水匠の勝ちパターンは、序盤でdlshogiに差をつけられないでついていくことです。具体的にはdlshogiが200点以下の評価値をつけたまま中終盤に入りたい。そうすれば逆転できる可能性が高いです」
「電竜戦システムでは、dlshogi側の評価値も見ることができます。序盤の評価値は、まあまあかな……くらいに思っていました」
「しかも矢倉の場合、持久戦模様だとdlshogiはムチャクチャ強いんです。しかし急戦だと……相掛かりや横歩取りに近い形だと、最後に読み抜けが起こる。だから戦型としては満足していました」
「最近は、dlshogi対水匠の将棋も教師として学習させています。すると水匠は、後手では急戦しか指さなくなった。持久戦が厳しいというのを学習し終わったのでしょう。学習段階でdlshogiの矢倉にボコボコにされているんでしょうね(笑)」
戦型は、不満のない形になった。
序盤の評価値的にも水匠は『自分が有利』と言っている。
だが……盤上は不穏な空気が漂い始めていた。
36手目。後手の水匠が9四歩と指すと、阿部は「先手がよく見えてきた。怖いところがない」と言う。
佐々木も「私も。水匠がどうするか?」と同意する。
対局開始から1時間が経過した18時。同時接続者4266人。
41手目まで進んだ局面では、まだ形勢ははっきりしなかった。
水匠の指し手にも違和感があるが、dlshogiも飛車をかなり狭い場所に移動させており、プロ棋士的にはどちらもぎこちない指し方に映るようだ。
しかし杉村は途中で画面に登場して「さすがに嘘じゃないですかね?」と、水匠の評価値に疑問を呈している。
「途中で水匠が300点くらい『自分がいい』と言い始めたんです。けど、局面としてはそこまでよさそうではない。dlshogi側がそんなに読めていないのに水匠だけがそこまではっきり『自分がいい』と言うのは、ちょっとおかしいぞと……」