「私や、電竜戦プロジェクトにコンタクトを取っていただいた場合は、どなたかに『こんな依頼が来たけど、やってみます?』と話を振ったり。そうやって交流の輪を広げられたらと」
「CSAは世界コンピュータ将棋選手権の開催に手一杯な部分もありそうなので、電竜戦のほうが足が速い部分はあると思います。面白いことがあればやってみて、失敗したら修正する。そんな感じで両方が補い合うように発展していくのが理想でしょうか」
さすがに今回のような大がかりなイベントをすぐに開催できるような元気はまだ回復していないが、「ちょっと疲れました(笑)」と言いつつも、杉村の目は少年のように輝いている。
「今回の結果には満足しています。今後も楽しいことができていけばいいなと!」
長時間マッチ第1局で現れたやねうら王のバグについて
……ところで、やねうら王のバグについてである。
これはいったい何が原因で発生したことなのか?
イベント当日から開発者たちはその原因を特定し、野田久順の尽力により翌日にはほぼ修正を完了するまでになっていた。
野田はNNUEを初めて実装した将棋ソフト『tanuki-』シリーズ開発チームの主要メンバーである。第5回電王トーナメントで優勝した、たぬきの着ぐるみを着ていた人……と言ったほうが伝わるかもしれない。
やねうら王開発者の磯崎は、このバグが長時間マッチで発生したことを知った時、こう発言している。
『dlshogiが先手番で強いのは、やねうら王系のソフトの後手番で出現するこのバグを学習したからでは?』
その推測が正しければ、将棋ソフトの発展にこのバグが無視し得ないほどの影響を与えているということになる。
果たしてバグの原因は何だったのか?
その影響はどこまで及んでいるのか?
磯崎本人の口から聞くことで、第一譜の締め括りとしたい。
──このバグのことは、事前に知っていたんですか?
磯崎:
読み筋に非合法手が入るという報告は、3~4件ほど聞いてはいました。しかし同じ条件でやっても再現しないし……読み筋だから、ま、いっか! くらいの気持ちでいました(笑)。