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「じゃあ、誰がいいんですか」 コーチ退任に協会は…中田久美前監督が初めて語った女子バレー“五輪の敗因”

「現場に専念させてほしかった」 中田久美独占インタビュー #1

2021/10/23

中田 その問題解決に対して、すぐに対処した方がいいのか、もう少し様子を見るべきか、伝えるタイミングや効果的な声掛けなどを考えていると、静止した画面の前で30分以上自分も固まってしまうことがたびたびありました。確かに、優先順位が食事ではなくなっていたことが多かったです。

病気説は否定

中田 とにかく選手一人一人の心身の成長を含め、どうすればもっと上手くなれるように導けるか、そしてこのチームを勝利に導くためにはどうすればいいか、ということだけで頭がいっぱいになっていましたから。

東京五輪では厳しい戦いが続いた ©JMPA

その他にもチームの強化に関わる仕事には提出期限があるものも多いので時間との戦いでした。それらを片付けているうちに疲れちゃって口にものを入れるのも面倒になってしまうんですよ。

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そういえば一時、瘦せたせいで病気説が流れたこともありましたね。私は普通に元気だったんですけど(笑)。

選手から一時も目を離すわけにはいかない

――中田さんは選手の朝の自主練から夜の練習までずっと選手と一緒にいました。自分の時間を大事にしたいとは思わなかったのですか。

中田 選手から目を離さないようにしていた一番の理由は、ケガのリスクを減らしたかったからです。選手が負傷するときって、午後の全体練習が終わった後の、自主練の時が多いんです。どういう状況でケガしたのか分からないと、その後の対処法も後手になってしまうし、何よりオーバーワークだと認識したらその場でストップをかけなければいけません。

 日本代表の選手になると、選考がかかっていることもあり、納得がいくまで練習を止めない選手が多いんです。でも、その選手のためにはならないと判断したら、途中で強制終了させました。ケガの一歩手前でやめさせるのも監督の仕事ですから。

 選手の所属チームに対する責任もあります。お預かりしている以上、無事にチームに帰さないといけない。そして、心身ともに逞しくなり、技術も向上させた上で所属チームに戻したいと考えていました。