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予算編成まで監督自ら負担

――監督時代の5年間、日本バレーボール協会と代表現場を繋ぐ“ハブ機能”ともいえる女子強化委員長が二人も替わり、19年以降は強化本部長が兼任していたとはいえ、本来の業務以外のことが増えたのではありませんか。

中田 二人とも病気での辞任なので仕方ありません。ただ両人とも、来シーズンに向けて準備する重要な時期での突然の辞任でしたので、引継ぎが上手くできていなかったことに加えて、次の女子強化委員長が決まるまで空白期間が生じていました。その間の時間はとても貴重で、強化計画や諸々の準備を進めるために欲しい情報がどこにあるのか、どうやって取ればいいのかも分からず、特に監督就任時や次年度はかなりあたふたしましたね。

 予算編成もやりました。協会からは「とりあえず計画を立てて予算を見積もって下さい」と言われましたけど、以前の基準が分からないですし、データもないから何をどうやったらいいのか……。

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 ただ、強化委員長が不在でもチームの歩みは止めることはできない。オフシーズン中、チームマネジャーと予算編成も含め来シーズンの準備をするしかなかった。当初はその準備が本当にベストチョイスなのかどうかも分かりませんでしたが、初年度から様々な準備をしてきたので、年々その経験を生かすことができ、後半は迅速にやれるようになったと思います。でもこれが結構なストレスでした。代表監督はこれも仕事と割り切っていましたが、もう少し現場に専念させてほしかった。

時折、言葉を詰まらせながら振り返る中田久美前監督 ©文藝春秋

「最後は私が自費で連れて行く」

――でも、予算は厳しく海外遠征に行く選手の人数制限を要求されたこともありました。

中田 18年、19年のネーションズリーグ(以下VNL)の時ですね。世界数か国を移動しながら5週連続で試合をするので、選手の体調を考え17人の選手を連れて行く予定で予算を組み、その計画を協会に提出済みでしたが、直前になって14人に絞って欲しいと。でも、転戦しながら14人で5週間戦うのはあまりにも選手に負荷がかかるし、そのあとに控えるアジア大会や世界選手権、ワールドカップのことも含めて計画していたのでそれは厳しい。最後は私が自費で連れて行くつもりで協会と交渉したところ、なぜ17人でなければならないか理解して頂き了承されました。