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「じゃあ、誰がいいんですか」 コーチ退任に協会は…中田久美前監督が初めて語った女子バレー“五輪の敗因”

「現場に専念させてほしかった」 中田久美独占インタビュー #1

2021/10/23
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「交渉事が増えるし、ストレスも溜まる」

中田 強化委員長の不在は、現場にとっては致命的。現場以外の交渉事が増えるし、ストレスも溜まる。次の日本代表がスタートするにあたり、強化委員長不在の空白期間だけは絶対に作って欲しくないですね。代表監督は、現場に専念できるような骨組みをしっかり作るべきだと思います。

――そもそも、協会から日本代表が世界で戦うためのビジョンは示されていたのですか。バスケットなどは技術委員会が代表を強くするためのビジョンや計画を緻密に作成し、現場は協会の方針に従ってチームを作るというレールがありましたが。

中田 バレーは残念ながらそこまでは……。特にスタッフ人事に関しては難しかった。セカンドコーチだったフェルハト・アクバシュが退任したときも、代わりのコーチを探してほしいとお願いしたのですが「じゃあ、誰がいいんですか」「他のコーチと相談してください」と言われたこともありました。コーチの人事権は協会にあり、私が決められることではないのですが、一事が万事そんなやり取りが多かったですね。 

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コート傍で常に冷静でいるよう努めた中田久美前監督 ©JMPA

コーチ退任の本当の理由

――アクバシュさんはなぜ途中で辞められたのですか。

中田 簡単に言うなら契約上の問題です。彼は日本女子代表チームとルーマニアのクラブチームを掛け持ちしていたので、来日するのは代表合宿が始まってしばらく経ってから。五輪が迫る状況下で、セカンドコーチが大会直前に合流するのは、チームを強化•準備・選考する上で疑問だったこともあり、もっと早く来日できないかお願いしました。でも協会とギャランティ含めた諸条件の折り合いがつかなかったと本人から聞いています。彼は若いし、今後のキャリアを考えルーマニアのクラブチームの監督を選んだのだと思います。

 ただ、フェロー(アクバシュのニックネーム)が退任したのは少なからず影響はありました。海外の情報がライブでなかなか入りづらくなってしまったんです。ネット社会の今、情報はいくらでも取れる時代になっていますが、海外の情報をいち早くキャッチできなくなったことは残念です。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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