――先ほど、ここでは登場人物の性別も不明だとおっしゃいましたね。実際、ある登場人物については、観客は見終わったあと演じた役者のプロフィールを見て、自分が想定していた性別との違いに驚くかもしれません。監督は、意図的にジェンダーを超越するキャスティングを行ったのでしょうか。
アレハンドロ・ランデス これは結果的にそうなった、という感じですね。少年兵たちをキャスティングする際、コロンビア国内外を問わず、何百人という少年少女を見ていきました。実際に会いに行ったりエージェントから届くビデオ映像などをひたすら見ているうち、僕たちは彼らの性別を徐々に意識しなくなっていきました。届いたビデオから僕が判断したある俳優の性別と実際の性別とが真逆だったこともありました。しかしだからといってその俳優が演じる役の設定を変える必要はありませんでした。男の子か女の子か、ということは、この映画のキャラクターを特徴づける決定的な要素ではない。そのことに僕自身が気付かされたのです。
そういう意味で、これはポストジェンダー的な映画だと思っています。90年代には、ずっと男の子だと思っていた人物が実は女の子だったことが最後に判明し、大きな驚きをもたらすといった物語の映画がよくつくられていました。でも僕がつくるのはそういう類の映画ではありません。これは液体のように常に姿を変え動き続ける映画です。ここでは性別、年齢、思想、国籍、あらゆる定義がうやむやにされます。どこまでもボーダーレスな映画なのです。でもそれこそが日々経験している現実ではないでしょうか。我々が何者でどのように世界を捉えているのか、実は誰も把握できていないのですから。
Alejandro Landes/1980年ブラジル生まれ。ジャーナリズムの世界で活躍後、ドキュメンタリー『コカレロ』(07)で監督デビュー。長編劇映画第一作『ポルフィリオ』(11)の後『MONOS 猿と呼ばれし者たち』を発表、サンダンス映画祭を始め世界各国の映画祭で話題を呼んだ。
INFORMATION
『MONOS 猿と呼ばれし者たち』
10月30日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
配給:ザジフィルムズ
http://www.zaziefilms.com/monos/