推定身長209cm、ピーク体重145kg。恵まれた身体で華々しい活躍を見せたプロレスラー、ジャイアント馬場氏は、力道山逝去後のプロレス界を新たなスターとして牽引し続けた。
そんな「プロレス界のレジェンド」を誰よりも知る男が、長年プロレス評論家として活躍する門馬忠雄氏だ。ここでは同氏の新刊『雲上の巨人 ジャイアント馬場』(文藝春秋)の一部を抜粋。35年ほど続いた交流における初めての出会い、そしてジャイアント馬場プロレスラーデビュー前の秘話を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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「ぶったまげた」ジャイアント馬場、身体のサイズ
初めて見たジャイアント馬場の身体のサイズには、田舎の言葉で「ぶったまげた」の声しか出なかった。
東北巡業での出会いから、この大きさへの印象が会う度に増幅する。石巻の会場では、緊張のあまり、馬場の肉体を上から下まで観察できなかった。それにしても16文といわれた足は、見れば見るほどデカい。
脚を組んで、投げ出された足を見て、「ウォーッ」という声しか出ない。
馬場さんのレスリング・シューズは、他のレスラーと違って、踵の部分だけボコッと飛び出しているのが特徴だ。
「出ました、ジャイアント馬場の必殺16文キック」
馬場さんの足のサイズは34センチ、16文は約38.4センチ、16インチが約40センチ。16文の由来は、アメリカでの武者修行時代、ロサンゼルスで購入した靴に(16)のラベルがついていたことから始まる。
アメリカ初遠征で開発した16文キックは、野球の投手のワインドアップからヒントを受け、馬場さんならではの必殺技となった。「あれは偶然出た技だった」という。
16文キックと命名したのは報知新聞の故須藤英昭記者だ。1964年春、2度目のアメリカ遠征から帰国し、日本で大暴れし出した頃だ。活字メディアが「16文キック」という言葉を使いはじめ、日本テレビの実況中継で清水一郎アナウンサー、バトンを受けた徳光和夫アナウンサーが「出ました、ジャイアント馬場の必殺16文キック」と盛んに連発するようになった。