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 後援会は強制でなく自律的に選挙のために動く集団であるといえる。そのため、ときに、候補者がいなくなると、次なる候補者を探しだしてでも選挙を続けようとする。世襲の要因のひとつは、後援会の存在があることが言われるが、それは「選挙好きのおじさん」たちがいるからであろう。

都市生活者やインテリは、地道な選挙運動に冷ややかだが

 こうした後援会の中心にあるのは、候補者本人の熱意である。これが選挙においてはなによりも大事なのは言うまでもない。

 三浦は著書のなかで、選挙を「熱伝導」に例えている。候補者本人が「熱源」となって、その熱を様々な方法で有権者に伝えていき、それが票になるのだと。なるほど、いくら握手してまわっても、候補者本人に熱量がなければなにも起きないし、家族が白けていては支援者にさえ熱は伝わらないだろう。ときに妻や家族、ウグイス嬢など周囲のスタッフの一途さ、一生懸命さも熱源となり、それが票にかわっていく。

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『なぜ君』の冒頭、小川は誰もいない田んぼに向かって演説する。それでも誰か一人くらいは見ているものだ。そうやって日頃から熱をあちこちにばらまいておいて、選挙期間中に燃え上がらせるようにして最大化する。それが選挙なのだろう。

 都市生活者やインテリは、ここまでに記したような地道な選挙活動に冷ややかなものだ。毎日毎日、早朝からビールケースの上に立って演説をしたりしてなんになる、もっと大事なことがあるだろうと。しかし理屈で割り切れないのが人間だ。当落はその領域での争いで決まるのだろう。そう考えると、選挙とはなんと人間くさいものであろうか。

(注1)別冊宝島M『選挙だ!!選挙』収録、上野玲「原健三郎、在職半世紀!のヒミツ」(宝島社)
(注2)三浦博史・前田和男『選挙の裏側ってこんなに面白いんだ!スペシャル』(ビジネス社)