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「松本人志、嫌いなの?」「大嫌いですよ!」“国交断絶”の松本人志と太田光、ガチンコ発言を笑いに変えたスリリングな芸

『藝人春秋Diary』より#2

2021/11/19
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「墓標」になった発言

 それを笑いで受け入れる器量こそ大物芸人の持つ奥行きであり、だからこそ切磋琢磨を経た、松本、太田は、冠番組を持つ座長芸人足りえている。むしろ、地位的に言えば、因縁三者のなかでボクが一番「売れたことがない」下っ端であり、鉄砲玉であるだろう。

 だからこそ、一石を投じてみたのだが、しかし今回、もしかしたら本当にボクは松本さんを「しくじった」かもという一抹の不安は残った。

 むしろ、テレビ界的には「遺書」ならぬ、ボクの「墓標」になった発言なのでは......と。

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 一応、お詫びを込めて水面下で確認していると、翌日、松本と交流の深い放送作家から電話があった。

「あれ、松本は『まったく気にしてない』って言うてたよ。ただ一点だけ、なぜ博士は普段は『松本さん』と呼ぶのに、あの時だけ『松本人志』と呼び捨てだったのか、そこは気になったみたいョ」とのこと。「そうですね。今後、気をつけます。でもあの状況でボクが『松本さん』と言っても、誰だか瞬時にピンとこないので」と、短く言い訳させてもらった。

 電話を切った後、安堵しつつ、ボクはふと1994年に出版された超大ベストセラー、松本人志 著『遺書』の一節を思い返していた。

 たとえば、誰かをつっこむときに「お前は高木ブーか!」と呼びすてにする。この場合「さん」づけすると笑いになりづらい。しかし、呼びすてにされた人はムッとするかもしれない。結局、どのみち、だれかを敵に回すのだ。それなら、思う存分敵に回してやろうではないか。

 翌週の『ワイドナショー』――。

 今度は、もともと浅草キッドの弟子であった吉本芸人・ハチミツ二郎と大仁田厚の有刺鉄線電流爆破マッチの壮絶な模様が放送された。

 しかし、この試合実現への黒幕が実はボクだとわかると松本「さん」は、「またや! だからあいつ、シメなあかん!」とニヤリと笑った。

その後のはなし

「お前が向こう(ハワイ)でこんがり焼けてる間に、オレはずっと炎上してたけどね。そういう意味では焼けましたわ!」

 2019年2月3日放送『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』(日本テレビ)で、正月休み明けの浜田の浅黒い顔を見た松本は自虐ネタで笑いを取った。