いったんは殊勝な態度を見せた太田だったが、ボクが再び「これが松本人志ではなく恵俊彰だったら?」と水を向けると「それは、本当に嫌いなのは恵。だって、つまらないから!」と芸人の性で反射的に持ちネタを繰り出し、さらなる墓穴を掘った。
これら一連の経緯が週末の『ワイドナショー』で取り上げられると、松本人志は「盛り上がって話題になって笑いになったならいいと思いますよ。そういう意味じゃ何だってありだと思うんですよ。僕はもう、(たけし・タモリ・さんま)が大嫌いですよ!」と松本は太田発言に理解を示しつつ、「恵さんはなんにもしてませんけど......」との東野の指摘にも「ですね!」と頷き、返す刀で批判の全矛先はボクに向かって冒頭の言葉と相成った。
松本と太田のアンタッチャブルな確執
笑いとは、常に敵を作る可能性があるブーメラン構造だ。
とはいえ、今、振り返っても今回の発言が確信犯であり、故にボクにブーメランとなって返ってくるのも演者として覚悟すべき当然の報いなのだ。
松本と太田のアンタッチャブルな確執。
それは1994年、一世を風靡した男性向けデートマニュアル雑誌『ホットドッグプレス』(講談社)のコラムで、読者層を意識して気負ったのか、ファッションセンスをネタに、太田が下克上的に松本人志をイジったことに端を発する。
当時、既に天下取り寸前の地位にあった松本に対して、太田は太田プロから独立してドン底状態。太田は、やさぐれ、ささくれ立った気性のままトンチンカンな切り口で某スポーツブランド製品を愛用する松本を批判した。
程なく、その内容は本人に伝わり松本は大激怒。フジテレビの楽屋に爆笑問題を呼び出して“シメた”と、まことしやかな記事が当時の週刊誌に掲載された。
後年、ボクはそれを元に拙著『お笑い 男の星座』で「爆笑問題問題」と題して、この抗争を面白おかしく憶測し活字活劇化した......というのが大まかな三者の睨み合いの構造、あたかもアディダスのトレフォイル(三つ葉)マークのような、三者の因縁のカタチができあがった。
その後、2011年12月18日、ラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』のゲストに、長く共演NGのはずだった浅草キッドが招かれた。
スタジオに不穏な空気が漂うなか、ボクが第一声で「迷惑だからゲストに呼ばないでよ! 自分らも『ダウンタウン』に呼ばれたらどうする?」と言うと、太田は一本取られた風に顔をしかめて「行かない! そんなの絶対行かねぇよ!」と答えた。