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《現役引退》「期待に応えられなかった日本での7年間の慙愧の念は、一生背負っていく 」 松坂大輔が“給料泥棒”とバッシングされるより“辛かったこと”とは

《現役引退》「期待に応えられなかった日本での7年間の慙愧の念は、一生背負っていく 」 松坂大輔が“給料泥棒”とバッシングされるより“辛かったこと”とは

松坂大輔インタビュー#2

2021/11/02
note

スポーツ紙の報道で計画が狂った引退発表

――松坂さんは友人知人が多い。自らの口で引退の報告はできたんですか。

松坂 それが…。球団への報告から発表まで2日間あったのでその間にできるだけ自分の口で報告しようと考えていたんですけど、球団発表前日に、情報を掴んだスポーツ紙が記事にするということが分かり、引退報告を1日でこなさなければならなくなった。

 報告リストを作り、お世話になった方々にしっかりお礼を言いつつ、引退の報告をさせていただこうと考えていたのに、スポーツ紙のフライングで計画が狂ってしまったんですよ(笑)。

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「一番いい思いと、どん底を同じぐらい経験した選手」だと自分を評した引退会見

 慌てて電話したので皆さんとちゃんと話せなかったし、電話に出なかった人はそのままになってしまい、結果的に礼を欠くことになった人がたくさんいて……。

 石井貴さん(楽天イーグルス投手コーチ)には電話したらすぐに切られちゃって。シーズン中に電話することはめったにないので察したんでしょうね。またかけ直し「引退しようと思います」と告げたら「えっ、えっ、何? 電波が悪くて聞こえない」って、またプツンと切られてしまいました。それでまたかけ直すという(笑)。

 

 ただ、自分で引退を決断し、球団が正式発表したにもかかわらず、まだ引退を受け入れられない自分もいたんです。リハビリやケアを懸命にやればよくなるかもしれないって。引退試合をシーズン終わりにしてもらったのもそんな一縷の望みに賭けていたんですけど、結局良くなることは全くなかったですね。

 でも往生際が悪くて引退試合前日も、明日朝起きて、痛みが消えて普通に投げられるようになっていたら、「やっぱり現役続行します」と言ってもいいものだろうか、なんて妄想していましたね。そんなことありえないのに(笑)。

引退記者会見で「批判中傷をはね返す力が僕にはなかった」

――引退記者会見で「これまでは批判中傷をエネルギーに変えてきたが、もうそれをはね返す力が僕にはなかった」と仰っていましたが、そもそもネット記事を読むんですか?

松坂 基本的に自分に関する記事はほとんど興味ないですね。褒められても叩かれても、自分からチェックすることはほとんどありません。でも、おせっかいな友人たちが大勢いて、バッシングされている記事を「大丈夫?」と心配しながら転送してきたり、リンク先を貼ったメールで送ってくるんですよ(笑)。そうするとどうしても目に入るじゃないですか。

引退会見での松坂大輔

 でも以前はどんなに批判されようとマウンドではね返してやるとそれがモチベーションになってきたけど、最後は批判をはね返す力もなく、心が折れてしまいました。