V6が後輩たちに残す、最大のプレゼント
思い起こせば25周年の配信ライブで、坂本さんが「まぁ25年やってるとね、いいことばっかりじゃない。実際ずっとやってきて……今この瞬間を迎えられて、本当にファンのみなさんに、勇気と元気をもらってるんだなって」と言葉につまりながら話してくれました。
6人が25年間勤め上げたV6は、ジャニーズを代表する派手派手しいスターというよりも、そこにいてくれるだけで心がなごむ“青年会”のような存在になっていました。
多くのグループが「少しでも大きな会場を!」と望むのに対し、V6はグループのパフォーマンスを楽しんでもらえる距離感を大事にし、敢えてほどよい、ホールやアリーナクラスの会場を選んできました。それだけに、チケット争奪戦はときに他のグループ以上に過酷になってしまうことさえありました。
また、代々木競技場第一体育館には、ステージから遠いファンのために2階スタンド席前まで続く花道をつくり、彼らのほうからファンに駆けよってくれました。この花道はその後もV6が代々木でコンサートを開くときには度々登場して“Vロード”と呼ばれるようになり、他グループファンの羨望の的になっています。
瞬間風速でジャニーズのトップに立つ時間はそれほど長くなかったかもしれませんが、安定したファンベースを抱え、アンチがほとんどおらず、独特のペースで輝くV6はうらやましく思える存在でもありました。それだけに「絶妙な立ち位置なのになぜ?」と解散に首をかしげる後輩も多いでしょう。
しかし私には、V6がジャニーズの後輩たちの最大の悩みに答えようとしているように見えます。現在のジャニーズの若手たちは「これから自分たちはどうなるのだろう? どうやって進んでいけばいいのだろう?」という疑問と向き合っている人も多いはずだからです。
先輩たちが理想的とは言えない結末を迎える姿を目の当たりにすれば、「自分も最後は切ない結末を迎えるかもしれない」と不安になる人だっているでしょう。 V6はそんな後輩たちのために“美しい幕引きのシークエンス”を見せようとしてくれているのではないでしょうか。
誠意を持って解散の経緯を包み隠さずファンに伝え、ファンの悲しみを受け止めてともに泣き、最後は笑顔で手を取り合ってゴールを目指す。過去のジャニーズが誰もなしえなかった愛に溢れる丁寧なエンディングを、彼らは見せようとしてくれているのだと思います。
デビューから誰ひとり欠けることなく25年という歳月を駆け抜けた、理想的なアイドルのフルパッケージ。こんな尊いものをファンと後輩に残そうとしてくれるV6のファンとして生き様を見守る経験は、ファンの胸に誇らしく刻まれるはず。それは過去にほとんどのアイドルが達成できなかった偉業中の偉業であり、ジャニーズ史に燦然と輝く金字塔になるはずです。
「ずっと」っていつまで?
デビューするとき、アイドルたちは「ずっとついてきてね!」と言います。もちろんずっとついていくけれど、“ずっと”っていつまで? 終わりを迎えたとき、心に空いた喪失感の穴はどう埋められるのか。その答えを、V6が示そうとしているのです。
SMAPの解散、嵐の活動休止に続き、予期しなかったV6の解散はジャニーズの“サードインパクト”になりかねないものでした。あいつぐ解散やメンバーの脱退に「ジャニーズはもう終わりでは」と言う人さえいますが、私はそうは思いません。
ジャニーズは死なない。V6の心意気が守るから。
私には、そんなふうに思えるのです。