1ページ目から読む
5/5ページ目
茶室で「ピクニック」
それから樹木さんは、
「私、さっき出がけに、おにぎり握ってきたのよ」
と言うと、いきなり茶室に風呂敷を広げた。そして、ラップに包んだ玄米おにぎりとプラスチック容器を取り出して並べ、
「ほら、みんないらっしゃいよ」
と、プロデューサーや監督にも手招きする。みんなで、茶室で車座になってピクニックのように樹木さんの玄米おにぎりをいただくことになった。
おにぎりの具は、昆布の佃煮。プラスチック容器の中には、コンニャクと里芋と鶏肉の筑前煮、それから、ほどよく漬かったキュウリのお漬物。どれもよく味がしみて、おいしかった。
樹木さんはホテルの前に停めてあったクラシックカーみたいな愛車に乗ると、
「先生、送ってあげるから、お乗りなさいよ」
と、声をかけてくださった。
「これから、みなさんと打ち合わせなんです」
と言うと、
「黙って言う事聞いてると、便利に使われるわよ。気をつけてね」
と、手を振り、颯爽とハンドルを切り、走り去った。
【後編を読む】「あ~、大変だった。もうくたくたよお」女優・樹木希林が映画撮影でみせた、原作者の度肝を抜く“神業”とは