テストステロンが炎症を防ぐ
炎症という言葉は日常的にも使われるものでありながら、意外と一般の人に説明するのが難しい医学の専門用語です。わかりやすいのは、からだにできた傷が化膿したときです。ウミは細菌と格闘した白血球、すなわち免疫細胞の死骸だということは聞いたことがある人もいるでしょう。化膿したときは腫れて、痛みや熱を伴います。これが古典的な意味での炎症、すなわちメラメラと燃えている感じです。免疫細胞は細菌を排除するために、サイトカインと呼ばれるさまざまな物質を出し、その結果熱が出たり、腫れやむくみを生じたり出血したりします。
新型コロナやインフルエンザのようなウイルスが肺に入れば肺炎が起こります。肺の炎症、略して肺炎です。この場合も肺で免疫細胞とウイルスが戦い、同じように肺の臓器に腫れやむくみ、出血、熱などが起きています。
これらは典型的な炎症ですが、実は細菌やウイルスなどの感染症だけに限らず、糖尿病や痛風、高血圧、腎臓病といった慢性的な病気でも弱い炎症が起こっています。炎症が長く続くことで臓器の細胞が傷み、結果的に動脈硬化や肝硬変といったより重い病態へと進行していきます。
AMSの点数が高いということは、気がつかないうちにこの「炎症」がからだの中に起こっていて、そのために質問項目にあるような「症状」が起こるのだと考えられます。
もともとテストステロンには炎症を防ぐ働きがあります。テストステロンがその人の基準値よりも下がると炎症が起きるようになるわけです。
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