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若手に負かされ続ける中、この急所で勝てるのか

 高見くんとは高見泰地七段のこと。以前、文春オンラインにも記事(「解説上手なニューヒーロー」高見泰地叡王は防衛へ逆転できるか?)を書いた縁のある若手棋士だ。

 年齢こそ離れているが練習将棋でずいぶんと盤をはさみ、公式戦でも対戦を重ねている。筆者からすれば、高見七段の背中を追うことで成績を盛り返してきたところもある。

 最後の対戦は一昨年の順位戦C級2組での全勝対決。タイトル獲得→失冠と、天国と地獄を味わった高見七段の成長を感じさせられる内容で負かされた。そこから高見七段はC級1組に昇級、さらに昨年度はB級2組へ連続昇級を果たしている。

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 だいぶ差をつけられたが、大一番でまた高見くんと対戦したい。その思いを胸に裏街道で白星を重ねて決勝までたどり着いた。

 他棋戦で結果が残せない中、裏街道に星が集まったのは対戦相手が先輩ばかりで思い切ってぶつかったことが幸いした。

 しかし若手に負かされ続ける中、果たしてこの急所で勝てるのか。

 7月に年下との連敗を8で止めて、ほんの少しだけ自信を取り戻したのも束の間、公式戦で3連敗を喫して上げ潮ムードは消え去っていた。

©文藝春秋

相掛かりなら勝負になりそうな予感

 決勝に勝ち上がってからは、いつも以上に高見七段の将棋に注目していた。公式戦はもちろんのこと、ABEMAトーナメントでの対局も全て解析して調べた。対戦相手の棋譜を解析して、そこから勝利への手がかりを得るのは今では当たり前ともいえる準備だが、今回は普段より入念に行い、対局に向けてのシミュレーションを繰り返した。

 高見七段は作戦の選択肢が広くないタイプなので予想を立てやすい。相居飛車になるのは間違いなく、高見七段が先手ならば得意の矢倉でくる。

 高見七段が後手ならば追随してくるので、こちらに選択肢がある。

 高見七段の矢倉は強力で勝率も高い。作戦が決まっているだけに研究をぶつけやすいが、うまくいっても互角に持ち込むのが精一杯で苦しい戦いが予想される。

 こちらが先手になったら相掛かりでいこうと決めた。筆者は角換わりや矢倉も選択肢にあるが、様々な要因を鑑みて相掛かりを選択した。理由については企業秘密だが、相掛かりなら勝負になりそうな予感があった。

 対局の前々日にネット上で若手棋士に将棋を教わった。たまたま2局とも相掛かりに進み、どちらも完敗。2日後の大一番に指す作戦を変えようかと思うほどガッカリした。

 公式戦では連敗中、作戦面での不安も大きく、気持ちは落ち込んでいた。

 ただ救いもあった。同日の夜、緊急事態宣言が明けたこともあって、久しぶりに顧問を務める企業将棋部の例会にお邪魔した。そこで皆さんの応援の気持ちを強く感じて、気持ちが前向きになった。