毎年、数多くの新製品が生まれ、「定番」ともいえるモデルも愛され続けるスニーカー業界。それだけ多くの人に愛される市場だけに、「自分の思い出の一足」を持っている人も少なくないだろう。
「日本懐かしスニーカー大全」の著者であるライターの佐藤誠二朗氏に、時代を超える「名作スニーカー」をジャンル別ランキングにして選んでもらった。
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1980年代に大ブレイクしたスニーカー文化
1960年代までの日本では、大人がおしゃれをするときの足元は革靴やブーツが基本だった。アメリカのアイビーに触発されたみゆき族など、スポーツ用シューズをコーディネートに取り入れる文化も一部にはあったが、子どもじゃないのに「運動靴」や「ズック」を街で履くとは奇特なヤツ、と受け止められることが一般的だった。
一方、アメリカでは1950年代のフィフティーズファッションやアイビーの流行を経て、60年代にはヒッピーやサーファーが増殖、若者のカジュアルなライフスタイルが成立していた。それゆえ、日常的にスニーカーが履かれるようになっていたのである。その風が日本に届くのは1970年代になってからだ。
ファッションとしてのスニーカーを日本の若者に浸透させた立役者は、1976年に平凡出版(現・マガジンハウス)が創刊した雑誌『ポパイ』。当時のアメリカ西海岸の、スポーティでカジュアルなライフスタイルを至上のものとして紹介した同誌を読んで初めて、「運動靴」や「ズック」のことを“スニーカー”と呼ぶこと、そしてそれを街で履いてもいいのだと知った人も多かったのかもしれない。
1980年代に入ると、スニーカーは世界的に大ブレイク。本来はバスケットボール、スケートボード、ランニング、テニスなどのために作られた最新モデルや過去の名作モデルに耳目が集まった。スニーカー市場はかつてないほどの盛り上がりを見せ、その熱気は1990年代まで続いた。その後は“スタンダード”になり、2021年の現在、スニーカースタイルは老若男女に当たり前のように受け入れられている。
新しいモデルが登場するたびにスニーカーファンが色めき立ち、場合によっては熾烈な争奪戦まで繰り広げられていた1970年代から90年代。あの頃の人気モデルを、ジャンル別に振り返ってみよう。