実は深刻? iPhoneの「勝手にデジタルズームに切り替わる問題」
ところでiPhoneの望遠撮影では、ひとつ気になる症状があります。それは暗い場所でズームすると、望遠レンズが使われずに、広角レンズ×デジタルズームに自動的に切り替わる場合があることです。
今回のiPhone 13 Pro Maxは、従来のiPhone 12 Pro Maxと比較して、超広角と広角のレンズが明るくなった反面、望遠レンズは逆に暗くなっています。つまり望遠レンズで撮ろうとすると、従来よりもシャッタースピードが遅くなり、結果として手ブレが出やすくなるわけです。
こうした症状を回避するためか、やや暗い場所で望遠撮影をしようとすると、望遠レンズではなく広角レンズを用い、それにデジタルズームを組み合わせることで、望遠の倍率に合わせた写真を撮ろうとするのです。これは少々困りものです。
というのも、この「広角×デジタルズーム」で撮影したことは写真を見るまで分からず、設定でオフにすることもできないからです。これで画質がよければ何の問題もないのですが、デジタルズームならではののっぺりとした画像なので、あとから確認してがっかりさせられることもしばしばです。
しかもこの挙動は、例えば3枚を連続して撮影したときに、真ん中の1枚だけ適用されていたりと、挙動が読めないのも困りものです(以下のサンプルはまさにそのような状況で撮られたものです)。超広角と広角はレンズが明るくなっているとはいえ、これならば従来のiPhone 12 Pro Maxのほうがよかったのでは? とすら思ってしまいます。
一方のPixelは、デジタルズームが強制適用されることはありません。実はレンズ自体はPixelのほうが暗いのですが、AIによる処理が施されているせいか、実際に撮ると評価が逆転するのが興味深いところです。
しかしPixelは前述のように、超広角レンズがそれほど超広角でないという、AIをもってしてもカバーできない欠点があります。もし両方を所有している場合、超広角はiPhone、望遠はPixelを使うことで双方の欠点をカバーしつつ強みを活かせますが、どちらを買えばよいか? と問われると難しいところです。「超広角と望遠、どちらの撮影頻度がより高いか」で決めるしかなさそうです。
ちなみにiPhone 13 Pro Maxの小型版である「iPhone 13 Pro」は、カメラ機能は同等ですので、画面サイズがコンパクトなほうがよければ、こちらを選ぶ手もあります。一方のPixel 6 Proの兄弟モデル「Pixel 6」は、望遠レンズを搭載しておらず、せっかくのPixelの強みが活かせないことから、カメラ機能を重視するならばあまりおすすめしません。
最後にPixelのユニークな撮影モードをざっと紹介
iPhoneとPixelは、ここまで紹介した以外にも、複数のユニークな撮影モードを備えています。iPhoneのマクロモードなどは以前の記事でも紹介していますので、ここではPixelで利用可能なユニークな機能のいくつかを紹介し、本稿の締めとしたいと思います。
ひとつは撮影モードの「長時間露光」です。これを使えば、夜のハイウェイで、車のヘッドライトが流れる写真を撮影できます。iPhoneも「Live Photos」の機能を使えば似た写真は撮影可能ですが、手持ちではブレやすいiPhoneに対し、Pixelは三脚なしでもそこそこの効果が得られるのが強みです。
もうひとつは、風景写真に意図せず人が写り込んでしまった場合などに、それらを検出して消去する「消しゴムマジック」なる機能です。Photoshopなどのレタッチソフトを使うのと異なり、Pixelの画面上で、検出から消去までを何回かのタップで行えるのが強みです。
写真:山口 真弘