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「東大院生初」の箱根路出場を目指す男の異色の人生 “博士の卵”はなぜ走ることに魅せられたのか?

2021/11/19
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「学生トップのランナーたちと走るのはいい経験になりましたし、いろいろ参考になりました。トップの選手たちは、オンとオフの切り替えがものすごくうまいなと思いました。それに、夕食後には原晋監督とお話しできたのも楽しかったです(笑)」

 東京に出てきたことで人脈も広がり、そうしたなかで迎えたのが、10月の箱根駅伝の予選会だったのである。

撤廃された箱根駅伝の年齢制限

 18歳のときに、一度は諦めた箱根駅伝。ところが研究者の道を進んだことで、再びチャンスがめぐってきた。しかも、より可能性の高いチャンスが。

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「それでも箱根を走るには、まだまだ力が足りないと思っています。今回、選ばれた学生連合チームの選手の中では14番目のタイムなので、正直、本戦を走るのは難しいかもしれません。それでも、正月に向けてしっかりと準備をしたいと思っています」

予選会では有力校の選手とそん色ない走りを見せた ©文藝春秋

 今大会に出場できなかったとしても、古川にはまだ博士課程での時間が残されている。

 1992年まで箱根駅伝には「27歳以下」という年齢制限があったが、いまは撤廃されており、古川にはまだチャンスが残されているからだ。ちなみに、駒澤大学の大八木弘明監督は、社会人を経て駒大に入学したが、4年生の時にはこの年齢制限に該当し、走れなかった。

東京大学大学院生で史上初の箱根ランナーとなるか

 仮に今回走れなかったとしても、来年はより強くなれると研究者である古川は仮説を立てている。

予選会後にチームメイトと談笑する古川 ©文藝春秋

「今年の予選会では、15キロ地点の通過が45分3秒だったので、ほぼ1キロ3分ペースで押せたんですが、そこから落ちてしまったんですよね。来年はずっと3分で押せるようにトレーニングを積んでいきたいです。もちろん、トラックでも、5000mでは13分台、10000mでは28分台、これは絶対に出さなければいけない数字です。たとえ今回の箱根駅伝で走れなかったとしても、来年は文句なく10番以内に入って、箱根駅伝を走りたいと思っています」

 東京大学大学院生が箱根を走るとなると、これは史上初めてのこととなる。

 駒場キャンパスの中にある研究室での日々をおくりつつ、古川は箱根駅伝で走ることを追い続けている。

インタビュー撮影=松本輝一/文藝春秋

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