それよりも、多くの人が成果を出し、組織全体のモチベーションを上げていったほうが、最終的に大きな結果を得られますし、大きな成果が出ると結果的にそれが自分の成果になることもあります。マネジメントの立場でいる以上、自分があまり最初から前に出てしまうと長続きしないし、仕事の成果も大きくならないなという風に思っているのです。
「あれやったの、俺なんだよね」の先にあるもの
例えば何かプロジェクトが成功すると、社内で「あれやったの、俺なんだよね」という人間が大量に発生することがあります。でも、それでいいのです。むしろ、「あれ、私がやったんですよ」「俺がやったんだよ」と自慢してくれる人が増えてくればくるほど、私の中では「ああ、よかったな」という思いが強くなります。
「あれ俺」と言っている人が多いということは、それだけ成功体験を積んだ人間が多いということ。結局、いろんな組織が連動して会社の事業は動いていくものです。予算も人も多くのものが稼働しないと大きなものは動かない。大きなものを動かそうとするなら、組織内の多くの人たちに「これは自分がやったからだ」という思いを持ってもらうことが必要になります。上司がピシッと叩いて「動けよ」と強制し、その瞬間は動いたとしても、絶対に長続きしない。
「大きな動かない石」をどう動かす?
大きな動かない石をどう動かすかという時、みんなでちょっとずつ押していったほうがより転がりやすくなる。しいて言えば私の仕事は「背中を押すこと」ということになります。
自分じゃなくても誰かが石を動かせる、その誰かが明確に分かっていたら、その人に任せる。その人が動かせないんだったら、動かす手伝いをする。それでうまくいったとしたら、その石を動かしたのは僕ではなくて、背中を押されたメンバーです。そういう人はきっと「自分がやった」と言う。それでいいし、その方がいいのです。
写真=佐藤亘/文藝春秋