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11月第4週の放送で描かれた岡山大空襲の記憶

 ひとつだけ明らかなことがある。この物語の中心にあるのが「ラジオの英語講座」であることだ。日本人にとって、英語は海外への扉であり、アメリカの影と結びついている。11月第4週の放送では1945年6月29日の岡山大空襲が描かれた。

 軍需工場ではなく、明確に木造家屋とそこに住む民間人を狙った空襲。日笠俊男著『米軍資料で語る岡山大空襲-少年の空襲史料学-』の中には、米軍資料『目標情報票』の中でアメリカがこの空襲をどう意味づけていたかわかる記述が収録されている。

「岡山市への空襲は、たとえより小さい都市でも、その都市が戦争遂行上少しでも重要な働きを果たすものならば、見逃されるとか無傷でいることはできないという、更なる警告となるべきものであらねばならない。もしもほかの小都市の住民が、自分たちの未来は灰色だと思っているのなら、この空襲はそれを真っ黒にするであろう」

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 その短い文章には、「女性や子供を含めた日本の市民に大量の死者を出して思い知らせる」という露骨な意志が示されている。 

 岡山大空襲は、かつて高畑勲監督も幼少時に経験し、その記憶はのちに『火垂るの墓』の神戸大空襲の凄惨な描写として蘇ることになる。それはアメリカという国の残酷さ、戦争の暴力の記憶と結びついた歴史だ。

©️深野未季/文藝春秋

 だが同時に米軍の殺戮は、日本に敗戦をもたらし、戦後に女性は参政権を獲得し、社会進出は進む。家族を失った安子は、空から死を降らせた国の言葉、英語に出会い学び始める。

 アメリカは時に自由を与え、アメリカは時に生命を奪う。このドラマは序盤ですでに日本女性とアメリカの複雑な関係に踏み込んでいる。「すべての『私』の物語」と銘打たれた3世代の女性の物語は同時に「アメリカと私」の物語、日本とアメリカの物語でもあるのだ。

 NHKの公式ホームページには、「これは、すべての『私』の物語。」の画像と入れ替わるように表示される画像に、100年の時間を象徴するような大樹に登る、上白石萌音、深津絵里、川栄李奈の3人の写真に「未来なんてわからなくたって、生きるのだ。」というコピーが添えられている。

 この物語がどこに向かうのか、視聴者のほとんどはまだ知らない。だがその未来の行方には、やがて多くの人が目を離せなくなるだろう。これは上白石萌音や川栄李奈、そして深津絵里に選ばれた物語なのだから。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。