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「絶対治りませんよ」の暴力性

 問診票を書いたあと、診察室に入るなりくだんの「お薬手帳全否定」が行われ、その後、先ほど私が書いた問診票と紹介状を見ながら、ひたすら医師から質問を受けた。自分の生い立ち、心身に異常を自覚した時期、それからどういった治療を行ってきたかを事細かに聞かれるのだけれど、いちいちこちらの言葉を遮り、決めつけ、持論を押し付けるその医師の姿勢が、これまで通院するのをやめた病院の特徴と重なり、途中からは「ここもダメそうだなぁ」と思わざるを得なかった。

 駄目押しだったのは、カウンセリング治療についてその医師が言及した内容だった。

「あなたはうつ病ではありません。うつ病なんて、普通は3ヶ月あれば治るんです。でもあなたは5年も治療を受けている。それでも治らないのは、子供の頃から受けていた虐待などによって、あなたの人格が大きく歪んでいるからです。カウンセリング治療を週に1回、少なくとも5年から10年は受けてもらわないと、絶対に治りません」

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「絶対に治りません」と言われた途端、ズシン、と体が重たくなり、心が硬い殻に包まれていくのを感じた。こちらも馬鹿ではないので、自分の症状を楽にするためにたくさんの文献をあたり、医師にも相談し、カウンセリング治療も含めて、さまざまな試みをしてきた。今年の前半にかけての1年半は、臨床心理士のもとで複雑性PTSDなどの治療法として注目されている「スキーマ治療」というカウンセリング治療を月に2度、1回につき2,000円で受け、悪夢を見る頻度が減ったり、不安を感じた際に感情のコントロールができるようになるなど、これまで苦しんできた症状が大きく改善した。

高額の治療費を提示し「まあ、そこは頑張っていただいて」

 スキーマ治療のおかげでストレスとの付き合い方がうまくなり、自分の特性を知ることでかなり生きやすくなった。大阪で通院していた病院の臨床心理士や医師と相談して「一旦カウンセリングは必要なくなった」と判断し、それからは徐々に減薬していく方向で調整をしてきたが、新しく訪れた病院の医師に言わせれば、「スキーマ治療なんて、効果がありません」とのことだった。

 1回につき8,000円かかるカウンセリングを週に1度、月に換算すれば3万~4万円の治療費をかけて5年から10年続けなければ絶対に治らない。そう言う医師に対し、「金銭的にそんな余裕はない場合はどうすればいいのですか」と尋ねてみたが、「まあ、そこは頑張っていただいて。治療のためですから」の一点張りで、例えば精神障害者の公的福祉に繋げるだとか、具体的な解決法は一切提示されなかった。では、それだけの治療費を支払えない人間は、どうすればいいのだろう。