昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載日の丸女子バレー 東洋の魔女から眞鍋ジャパンまで

2021/12/25

銅メダル獲得をかけた韓国戦前夜のビデオ

 中国を僅差で下した日本は、準決勝で女王・ブラジルと向き合った。11年秋のワールドカップで日本はブラジルを下していたが、実力からすれば世界ナンバー1である。しかも、Bグループの予選ラウンド4位で勝ち上がりながら、準々決勝ではAグループ1位のロシアを破り、チームは尻上がりに勢いを増していた。世界女王は、オリンピックでの勝ち方を体得しているのだ。

 日本は0−3で完敗した。生命線のサーブとサーブレシーブが乱れ、スパイクはブラジルの組織的なブロックに撥(は)ね返された。眞鍋が言う。

「ブラジルはこれまでと違う顔をしていました。それに、日本の戦術をよく研究もしていた。僕らが先に仕掛けないと勝てない相手なのに、後手に回ってしまいました」

 だがメダルの夢はまだ消えていない。3位決定戦はイタリアを破って調子に乗る韓国だった。

眞鍋政義監督(写真はリオ五輪時) ©文藝春秋

絶対やりきってくれると信じていた

 韓国には、世界ナンバー1アタッカーのキム・ヨンギョンがいることに加え、5月の5輪世界最終予選で日本は韓国に負けている。

 眞鍋は試合前夜、データ班の渡辺啓太が作成したビデオを選手に見せた。いいイメージで韓国戦に臨めるよう、日本のファインプレイばかり編集したビデオである。

 こうしたモチベーションビデオは大会直前と中国戦の前にも見せている。大会前はこの3年半の活動記録、そして中国戦前にはこれまでの対中国戦を編集した映像で、画面が変わるたびに激励のテロップまで書き込む念の入れようだった。

 眞鍋が胸を張る。

「渡辺は試合のデータを取る合間にこれを作ったはずなので、大会期間中はほとんど寝ていないと思います。対戦相手国が分からないから前もっては作れませんからね。でも、このモチベーションビデオを選手たちは涙を流しながら見ていたし、部屋を出るときは良い意味でテンションがすごく上がっていたので、翌日は絶対やりきってくれると信じていました」

 韓国戦当日、眞鍋はサイドアタッカーにこれまでスタメンだった江畑に代え、迫田を起用した。悩み抜いた末の決断だった。

z