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2021/12/05

生まれる前に「消える」女性

 センの論文以降、人口学者や社会学者たちは「消えた女性たち」を社会問題として議論してきた。国連人口基金(UNFPA:United Nations Population Fund)による2020年のレポート(UNFPA State of World Population 2020)によれば、2020年には本来生きているはずであった女性たち1億4260万人が「消えている」という。消えた女性の数は1970年の6100万人から50年で倍増している。消えた女性が圧倒的に多い国が2つある。中国とインドだ。中国では7230万人が、インドでは4580万人が消えている。世界から消えた女性の実に過半数が中国から、そして約3分の1がインドからなのだ。

 では女性たちはどうやって「消える」のか?

 まず女性が消えている地域では、そもそも女性の生まれる数が少ない。男児が1人生まれれば次の子供は望まないという選択をするだけでも女児の数に影響するが、それだけでは説明できない。男児が圧倒的に多い地域では、女児と分かった段階で堕胎しているのだ。これは超音波診断の技術発展によって、胎児の性別判断ができるようになったことが大きい。インドでは、胎児の性別判断は違法であるが、それでも2013年から2017年の間に年間約46万人の女児が誕生の段階で消えており、出生前の性選別(prenatal sex selection)がインドで消えた女性の約3分の2を占めるという。