ハラスメントにつながる持参金問題
これが伝統的な男性中心主義に加えて、女児よりも男児を好む傾向に拍車をかけることになっている。そして持参金が少なかったからと夫やその家族からハラスメントを受ける女性も多い。持参金で揉めて、結婚後に殺される「持参金殺人」(多くは生きたまま火をつけられて殺される)も一時ほど社会問題とはなっていないが、最悪だった2011年には年間8618人の女性が殺された(インド国立犯罪記録局調べ)。ちなみにインドでは持参金を要求することも支払うことも1961年以降は違法である。
女性の数がこれだけ減れば、需要と供給の関係から、結婚市場における女性の価値が上昇しても良さそうだ。だが、そう簡単には物事は進まない。むしろ収入の安定した職持ちの男性が少ないため、そうした男性に女性が集中する。さらに女性が若い方が持参金の額を低く抑えられるため、法律で決められた18歳を下回る年齢で結婚させられる女性も少なくない。
結果的に、多くの女性が「消えた」地域では、結婚できない若い男性が多く残ることになる。レイプなどの女性への暴力事件が多いのも同じ地域だ。北インドでは、北東インドなどのより貧しい地域から「買われて」きた女性たちが奴隷同然の扱いを受けているという報告もある。持参金を持ってきた女性たちですらハラスメントにあうのだから、「買われた」女性たちの困難さは想像に難くない。
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