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連載テレビ健康診断

最後に見たいあのシーン、ラストはどうなる!?――亀和田武「テレビ健康診断」

『最愛』(TBS系)

2021/12/10

 誰が殺したクックロビン(駒鳥)。ドラマ『最愛』の殺人事件を巡って、ネット上で過熱する“犯人探し”を目にすると、英国の童謡「マザーグース」の一篇が思い浮かぶ。

 今期のドラマでは、『最愛』は断トツのクオリティを誇る。さらに見逃し配信再生回数は、TBSドラマ史上最多を記録。SNSでの言及も急増中だ。

 高校生のとき酷(むご)い事件に巻きこまれかけた梨央(吉高由里子)と、初恋の相手の大学生、宮崎大輝(松下洸平)が、十五年後に事件の重要参考人と、捜査一課の刑事として再会する。

梨央を演じる吉高由里子 ©文藝春秋

 最初はぎこちなかった二人が、故郷の白川郷の話から、岐阜県飛騨の方言で喋りだす場面がグッとくる。「大ちゃん」「梨央」と呼び合う二人。ダークなサスペンス劇の芯には、タイトルの“最愛”がある。

 殺されたのはレイプ・ドラッグを使い何人もの女子大生を暴行し、事件直後に失踪した大学院生の渡辺康介。十五年後に康介の白骨化遺体が山中で発見されると、息子の行方を追っていた父の渡辺昭(酒向芳)の死体も世田谷の池で見つかる。

 梨央の弟、優(高橋文哉)は子どものころの外傷で脳の機能障害があり、興奮すると記憶が消える。梨央には大輝と同様にかけがえのない最愛の存在だ。

 梨央が社長の真田ウェルネス周辺を嗅ぎ回るフリー記者、橘しおり(田中みな実)は当初SNSでは犯人候補に上がってない。彼女の演技だけが酷評されていた。しかしスクープ狙いの記者にしては取材が執拗で何かあると感じたが。

 橘しおりって、十五年前の渡辺がおこした大量レイプ事件と関係あるんじゃないかとの書きこみが一件あり、もしかしてと思った。そして第七話で、橘しおりはレイプ事件の被害者の中でただ一人、渡辺を告訴していたとわかる。

宮崎大輝役の松下洸平

 レイプ犯の息子を捜して上京した父に接触した橘は「あの男は、最後まで謝ろうとしなかった」と梨央に語る。「親も息子も殺されたって仕方ない」と昏い顔で語る橘に「あなたが、あの人を」と叫ぶ梨央。翌朝、世田谷の駐車場で、彼女の転落死体が見つかった。衝撃の展開に、ネットはざわつく。田中みな実を非難する声はなかった。

 まだまだ酷い事件は起きるだろうが、私たちはそれを受け容れるだろう。犯人探しよりも、大ちゃんの爽やかだけど、どこか寂しげな笑顔が見たい。梨央が屈託なく大ちゃんと優の名を呼び、父がよく作った牛丼を三人して食べるシーンを最後に見たいのだが。

 第一話。血がべっとりついた手で、昂然と髪を掻きあげる梨央は、誰かを殺したのだろうか。陸上部で大輝の後輩だった藤井(岡山天音)か。あるいは母で大きな秘密を抱える薬師丸ひろ子だとしても驚かない。

INFORMATION

『最愛』
TBS系 金 22:00~
https://www.tbs.co.jp/saiai_tbs/

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