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バナナマンすり寄り作戦開始!

 バナナマンにすり寄ると言っても、どうするればいいのだろうか? 日村さんとは2年前に酒を飲んでから翌年一度お笑いライブを一緒に見に行ったくらいで、以降、プライベートで会うことはなく、本当にたまにライブで顔を合わせるくらいだった。

 それにこの頃になるとバナナマンのイニシアティブをとっているのが設楽統だということも芸人たちの噂で知っていた。つまりバナナマンと一緒に何かやりたかったら、日村さんには失礼だが設楽さんに「YES」をもらった方が確実だ。設楽さんとは一緒になったライブの時に日村さんを通じて紹介されたのだが、設楽さんもド級の人見知りなのでさほど会話は盛り上がらなかった。そんな感じですり寄ろうにもすり寄れないまま時間だけが過ぎていった。

 しかし、諦めるわけにはいかなかった。

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 ある日の『バカ爆走』で「今日のゲストはどのボキャブラ芸人なんだろう?」と香盤表を見るとそこに「ゲスト・バナナマン」という名前を発見した。このライブにバナナマンが来ることは珍しい。というかこの日が初めてだった。このチャンスを逃がすわけにはいかない。

「何があっても今日はバナナマンにすり寄る」

 僕は固く心に誓った。こうして、後の僕の人生に関わる一大作戦が決行された。

 この頃、『バカ爆走』のゲストコーナーではボキャブラ芸人が登場して、フリートークをするのがほとんどだったが、バナナマンはボキャブラに出ていないのでコントをしていた。この日披露したネタはその年の1月、バナナマン2回目の単独ライブ『処女2』で披露した名作「怖い話」だった。設楽が日村に怖い話をするのだが、設楽の話が下手すぎてまったく怖くない、という内容のコントなのだが、まさしくバナナマンの演技力だから成立するコントで「やはりこの人たちと一緒にコントがやりたい」と再確認させられた。

 ライブが終わり、バナナマンが袖に戻ってきた時、僕は設楽さんに近づいた。

「すり寄り作戦決行!」

 僕の頭の中でホイッスルの音が鳴り響いた。

「若手のライブ演出ってダサくないですか?」

「お疲れ様です」

 まずはさりげなく挨拶をした。設楽さんと話すのは日村さんを通して自己紹介したあの日以来である。

「おお」

 設楽さんは普通に対応してくれた。これから僕にすり寄られるとも知らずに……。

「今日のネタ、面白かったですね」

 僕は今日のネタを褒めてから、それに続いてバナナマンの知ってるコントを褒めまくった。なんだコイツ気持ち悪いと思われたかもしれない。しかし、気持ち悪かろうがなんだろうが褒められたら人は話を聞いてくれる。その流れでシティボーイズライブの話をした。実は日村さん経由で設楽さんがシティボーイズライブを見ていることを知っていた。

「シティボーイズライブとか見ると若手のライブ演出ってダサくないですか?」

 これがこのすり寄り作戦の一番のポイントだった。

「若手のコントライブはダサい→どうすれば格好良くなる?→俺の力があれば格好良くできる!」という論法ですり寄ろうとしていたのだ。