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特集観る将棋、読む将棋

2021/12/25

――無意識で出来てしまうことも多いでしょうね。将棋ソフトで研究のサイクルが加速しているので、過密日程のなか最新形を追いかけるのは大変なはずなんですが。

横山 将棋ソフトの出現は将棋界にかなり大きな影響を与えています。昔、自分が三段だったときは、振り飛車をやるなら藤井猛九段、久保利明九段、鈴木大介九段の棋譜を並べればよかったんです。いまは女流棋士やアマチュア強豪の方の序盤もチェックしておかないとだめでしょう。ソフトを使っているでしょうから、かなり正確です。

 

 以前とは取り込む情報の量が全然違います。とにかく、時間がない。それを思うと、藤井さんや豊島さんが色んな戦法を指しこなしているのは、本当にすごいことなんですよ。たくさん対局をしているのに、研究も進めているわけですから。

将棋ソフトがもたらした影響

――横山七段は2013年から得意戦法を振り飛車から居飛車に変えました。またその頃に将棋ソフトを使用した研究が広まり、特に相居飛車は定跡が急激に変化します。これらは自身が順位戦で昇級を重ねていったタイミングと一致します。将棋ソフトを使う研究のコツを早々につかんでいたんじゃないですか。

横山 どうなんでしょうか。電王戦で将棋ソフトが強いとわかってからすぐに使っていたので、それが自分にとって結果的によかったのかもしれません。聞けるというのは大きいんですよ。プロ同士だと、また公式戦で当たるかもしれないので、詳しくは聞けないですよね。その内容がすべて正確とも限らないですし。しかし、将棋ソフトならある程度の正確性を持った情報を提供してくれるので、自分にとってはありがたい存在でした。

 それでも、自分に何の力がついたかはわからないんです。正直、適性があるかもわからない。若い人のほうが上手に使えているんじゃないですか。例えば、相手が機械だと、こちらが適当に聞いちゃっても正確に答えてくれるから、頭に入ってこないんですよ。人間が相手なら、必ず自分なりにちゃんと考えてから聞きますよね。そこから違うんです。

 

――なるほど。相手が将棋ソフトと人間で、自分自身の態度が違うから吸収率が異なるのですか。確かに正解がわかっても、そもそも聞く時点で仕組みや理屈を深く考えていないと、表面的な理解だけで終わってしまいそうです。

横山 何が正解かを忘れちゃうし、間違えて覚えることもあります。似た形のちょっとした違いに対応できないことも多く、自分でも苦労している部分ではあります。