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将棋オールスター“東代表”が語る藤井聡太竜王の実力「なぜそんなに正確に読めるのか」

将棋オールスター“東代表”が語る藤井聡太竜王の実力「なぜそんなに正確に読めるのか」

横山泰明七段インタビュー #2

2021/12/25
note

年間250日は将棋の研究、息抜きはYouTube

――これだけ一気に順位戦で昇級を重ねたのに、強くなった実感がないのは意外でした。

横山 B級1組にいったのも、周りの棋士は驚いているんじゃないですかね。客観的な自分の実力や立ち位置はわからないです。例えば、今年の勝率は5割ぐらいなんですね。順位戦では成果を出したけど、他棋戦を考えると強くなったとはいえない。結局、勝つと強くなった、負けると弱いと思うことの繰り返しです。ほとんどの棋士はそうでしょう。非公式のレーティングは参考になれど、それをそのまま鵜呑みにするわけにもいきません。

 

――強さって相対的で、自分が仮に強くなっても、周りも強くなったら思うように結果を残せないでしょうしね。競争はますます激しくなっていくと思いますが、横山七段自身、1か月の平均的なスケジュールはどんなものですか。

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横山 月に対局が2~3局、研究会は週に1回ぐらい。あとは朝に起きて、夜までひたすら研究しています。それを繰り返していますかね。仕事もあるので365日というわけにはいきませんが、対局や研究会を含めれば250日ぐらいは将棋を考えています。僕はそれがスタンダードだと思っていて、本当に時間がないんです。自分は独身だからそういう時間の使い方はできるんですが……。若手の人はなかなか結婚できないんじゃないかな(笑)。

――それほどしないと、最先端の研究に追いつけないのでしょうか。

横山 うーん……。やりすぎると雑になりますし、実際はもっと効率よく研究できるんじゃないかなと迷っています。若手の人がどうやっているか、自分も知りたいぐらいです。

――聞いていると過酷な競争だと思いますが、息抜きはどうしていますか。

横山 いまはYouTubeを見ますね。音楽とかアニメ、日常生活で困ったことがあったら検索します。お気に入りは棋士のチャンネルで、将棋じゃないものをやっているコンテンツです。香川さん(愛生女流四段)のクイズ番組、里見咲紀さん(女流初段)の大食い。中村太地さん(七段)が「対局でいつもお茶を飲んでいるから」って、15種類ぐらいの利き茶をするとか、面白かったです。

 ネットは気をつけないと危ないですよね。パソコンで勉強していても、YouTubeにいっちゃうこともあるんです。見始めたら色々気になるものが出てきて、止まらなくなりますし。